夕方遅く
訓練は五日間続いている
異なる部門の部隊が巨大な臨時作戦地域を共有している。
車両。
テント。
コンテナ。
医療員。
技術者たち。
軍人たち。
通訳たち。
自分がどこに向かうべきかを完璧に把握しているように見える人間の数は圧巻だ。
そして、それを見事に演じている者たちもいる。
あなたはあなた自身の理由でこの地にいる。
そこへ、土の道から分隊が現れる。
彼らは汚れている。
疲れている。
埃と泥にまみれている。
先頭を歩くのは、装備にヘルメットをクリップし、とても短いダークブラウンの髪をぼさぼさにした背の高い女性。
太陽が彼女の鼻と頬骨にそばかすの星座を照らしている。
ルクレツィア・ファンチュッリ。
分隊には
「アダー」
と呼ばれている。
彼女の後ろの兵士が首を振る。
「ズルしたな。」
ルクレツィアは歩を止めない。
「待ち伏せにズルはない。」
「ルートを知ってただろう。」
「それを準備と言うのよ。」
「川を渡らせたじゃないか。」
ルクレツィアは歩きながら後ろ向きに振り返る。
「これでみんなもキレイになったでしょ。」
兵士は泥だらけの制服を指差す。
「これがキレイに見えるか?」
ルクレツィアが彼を見つめる。
間。
「いいえ。」
彼女が微笑む。
「でも似合ってるわ。」
誰かが笑う。
兵士は彼女に中指を立てて見せる。
ルクレツィアは芝居がかった仕草で胸に手を当てる。
「この不服従には傷つくわ。」
「訴えてくれ。」
「訴えるつもりよ。」
再び前を向く。
その時、彼女の目があなたと合う。
オリーブグリーン。
太陽の下できらきらと光っている。
ルクレツィアは、人混みの基地のど真ん中で見知らぬ人に出会うのがごく普通のことかのように微笑む。
簡単なうなずき。
そしてまた歩き続ける。
質問もしない。
あなたがなぜここにいるのか、憶測もしない。
分隊は指定された場所に到着する。
バックパックを地面に降ろす。
誰かが水を配る。
ルクレツィアは車両の後部に数秒間腰を下ろす。
「五分だ。」
分隊の一人がレーションを開ける。
中身を眺める。
「鶏肉…かな。」
ルクレツィアが中身を覗き込む。
「それは希望的観測だね。」
「味見する?」
「あなたのことは友人のままで覚えておきたい。」
いくつか笑い声が洩れる。
その時、声が響く。
「ファンチュッリ。」
その口調だけで十分だった。
ルクレツィアはすぐに顔を上げる。
下士官が、開いた木箱のそばに立っている。
彼は笑っていない。
「問題だ。」
ルクレツィアは車両から降りる。
変化はほとんど一瞬だ。
さっきまで冗談を言っていた女性が消える。
「何が無くなった?」
男が声を潜める。
ルクレツィアは耳を傾ける。
彼女の視線が木箱に落ちる。
次に記録帳に。
「再確認して。」
「もうやった。」
「もう一度。」
「ファンチュッリ——」
「もう一度。」
さすがに今度は誰も冗談を言わない。
数分後には命令が下る。
演習は一時中断。
車両は一台も地域を出られない。
関係者は待機しなければならない。
噂はすぐに広まり始める。
誰かがなくした。
誰かが持ち去った。
別部隊だ。
後方支援のミス。
盗難。
ルクレツィアは数秒間だけ耳を傾ける。
「もういい。」
それから、キャンプの半分はすでに決めつけているので:
「袖の部隊名だけで容疑者扱いはしない。ここの誰も、そっちも、うちも。」
彼女は声を張り上げたりしない。
その必要がないのだ。
「何が起きたのか、まだわからない。」
兵士がキャンプの別のエリアを指差す。
「今朝、あいつらがいた。」
ルクレツィアは彼を見つめる。
「それが?」
「やつらが持ち去ったかも。」
「もしくは、トラックから落ちただけなのに、今頃私たちは“賢い”気分になりたいから誰かを責めてるのかもね。」
静寂。
ルクレツィアは記録帳を手に取る。
「まずは事実を見つける。」
彼女は振り向く。
そして二度目、彼女の視線があなたと合う。
ただし今回は彼女は微笑んでいない。
ルクレツィアは、あなたが立っている場所をしばし見つめる。
だが何かが、彼女の注意を引いたようだ。
それはあなたではない。
少し離れたところの何か。
軍曹が近付いてくる。
彼女はしゃがみこむ。
埃の中に、小さな黒いプラスチック片がある。
ルクレツィアはそれを拾い上げる。
指先で回す。
ゆっくりと笑みが戻ってくる。
ただし、さっきまでの笑みとは違う。
「ふうん…」
顔を上げる。
「これは、面白くなってきたわね。」