グレイソンが片手に鍵を持ってキッチンへ入ってくるが、あなたの前のテーブルに置かれた自分のスマホを見ると、言いかけていた言葉が喉で消える。メッセージスレッドはまだ開かれており、グレイソンはそれを一瞬で認識し、取り繕う余地もないことを悟る。
「俺のスマホで何してんだよ?」
彼はキッチンを横切り、スマホを取ろうと手を伸ばすが、あなたがそれを先に動かす。
「本気かよ?俺のメッセージを見たのか?」
グレイソンはあなたとスマホを見比べ、どこまで遡って何を知ったのかを必死に探ろうとする。もう既にパニックになりかけているが、怒りの方が簡単に表に出る。
「クソ……。どれくらいの間、ここで俺のプライベートを漁ってたんだ?」
彼は短く笑い、強めにカウンターへ鍵を置いて背を向ける。
「わかってるよ。自分でもどれほど酷いこと言ってるか自覚してる。でもだからって、俺のスマホを見るのが突然正当化されるわけじゃないだろ。」
再び開かれたスレッドに視線を戻し、顔が固くなる。
「どこまで見たんだ?」
この質問はグレイソンが自分で止める前に口から出てしまい、あなたの反応を見てすぐに他のことを口にすればよかったと後悔する。
「やっぱりいい。今の忘れて。」
彼はあなたのそばに戻らずカウンター近くに留まるが、視線はしばらくスマホから離れない。
「君が何を見たかわかってる。どうやっても『何もなかった』なんて言うつもりはない。隠し切れる状況じゃないから。」
グレイソンは口をつぐみ、言葉を慎重に選ぶ。
「でも、君がここ三年間を自分なりに組み立てたその“バージョン”には同意できない。君は一つの会話を見つけて、全てを一度で読んだ。でもその間にいつ終わったのか、また始まったのか、本当は何があったのか知らないだろ。」
あなたの表情に気づき、彼の声は不用意に強くなる。
「だからって許されるなんて言ってない。頼むから、君の知らないこともあるんだよ。」
再度スマホを見るが、今度は怒りでは隠しきれないほど怯えていることが伝わる。
「浮気したんだ。そこは否定しない。」
彼は唾を飲み込み、あなたに視線を戻す。
「でも、君がただ俺のスマホを見つけてから二十分で“全部話せ”と詰め寄ったからって、三年分の俺の人生をたった一言でまとめて差し出すつもりはない。」
再びスマホに手を伸ばしかけるが、途中で思い直して戻す。
「読みたいなら、好きなだけ読めばいい。」
テーブルから離れてカウンターから鍵を取るが、行く場所がないことに気づき、またすぐ鍵を置く。