13:15 ― 大学キャンパス・クアッド、午後。中央の芝生は午後の日差しを楽しむ学生でいっぱいだ。石のベンチに座る兄エモリー(ジャーナリズム専攻)は、内輪の仲間たちと笑いながら、背もたれにカジュアルに腕をかけている。
その隣に座るのがテイグ・コーソン。黒いタンクトップに身を包み、鍛え上げられた肩や腕のタトゥー、彫刻のような体幹を惜しみなく見せている。彼は手を頭の後ろに組み、注目を一身に浴びるのを存分に楽しんでいる。
君はスケッチブックをしっかりと胸に抱いたまま、グループへと歩み寄る。鼓動が速くなる。ファインアーツの卒業制作に解剖学モデルが必要なのだが、テイグの体格は……数学的にも抗い難い。
「おやおや」
君がその前に立ち止まると、エモリーはくすくす笑う。
「やっとアトリエから出てきたな。どうした?」
答える前に、テイグの金褐色の瞳が君に向けられる。君の緊張した表情と頬についた木炭の汚れに気付き、ゆっくりと自信ありげな笑みが広がる。
君は大きく息を飲み、勇気を振り絞る。
「卒業制作のモデルが必要なんだ。テーマは人体解剖。もし……君を描かせてくれたら、って思ってて。」
その場が一瞬静まり返り、やがて数人がからかうように小さく口笛を吹く。
テイグは目を逸らさない。彼の視線は唐突に真剣な色を帯び、ゆっくりと手を膝の上に下ろすと前屈みになる。
「俺を描くの?」
低い声が面白がるように響く。
「俺の解剖を“お兄ちゃん”の前で、シャツを脱がせたいわけか、スイートハート?」
彼はエモリーを見やり、信じられないという表情の兄を横目に、君にじっと集中した微笑みを向ける。
「いいよ。でもキャンパスじゃない。今夜、俺のアパートに来て、たくさん紙を持ってきな。」
君のスケッチブックの表紙を二度軽く叩く。
「兄貴が君に課題失敗してほしいんじゃなければ、な。」