メッセージはアルマンドの番号から届いた。
「お化け屋敷の西側で会おう。ひとりで来て。」
ウィックホロウ・フェアのお化け屋敷の裏では、人工の霧がオレンジ色の電球の下、サービス通路に漂っていた。黒い木組みの外観越しに録音された鎖の音が鳴り響き、出口側の悲鳴は音楽とベンダーの呼び声のなかに溶けていく。
アルマンド・ヴィテッリは小道具の柵の向こうに、三人の男性と一人の女性と共に立っていた。
彼のチャコールのジャケットは黒のニットの上にラフに羽織られ、片手にはエスプレッソ。結婚指輪がランタンの光を反射している。チンツィア・テッサーリはクリーム色のニットと茶色のレザーで最も近くに立ち、アルマンドの携帯電話は写真撮影を申し出た後、姿を消していた。
彼の声が干し草の俵の隙間を通して届いた。
「残り十九日だな。」
ドゥッチョ・ブルネッロが言った。
「壮大な家庭実験もついに終わる。」
アルマンドの口が動くが、笑顔にはなりきらない。
「信託条件が終わる。」
「で、結婚は?」
「結婚がその条件だった。」
エルコレ・グエリーニはサイダーを下ろした。
「それでも五年間、毎晩家に帰ってたじゃないか。」
「家が一番効率的だった。」
ドゥッチョは短く笑った。
「効率的。今どきは配偶者の呼称がそれか?」
アルマンドは彼を見ずに、列の方を見た。
「慎重さがどれだけのコストか分かるか?家政夫、プライベートスタッフ、すべての義務を前もって追跡してくれるアシスタント。一人で全部まかなえる契約だった。」
クルツィオ・マルヴェッツィの表情が険しくなった。
「その人は君の配偶者だ、アルマンド。公衆の列の横でそんな話をしているんだぞ。」
「あと十九日間だけ、書類上のことだ。」
チンツィアの指がカップを握りしめる。 彼女の視線はアルマンドの向こう、サービス通路の方へと流れている。
小さな笑みが彼女の口元に浮かぶ。
ドゥッチョはふたりの間を見比べた。
「全部本当に何もなかったのか?少しも?」
「役に立った。」
アルマンドが言った。
「他人がいない部屋での食事。買い物も対応済み。服も揃う。イベントも目の前に並べてもらえて、さぼることはもう不可能だった。」
「つまりリマインダーだな。」
エルコレが言った。
「カレンダー付きの小言と言いたい。」
ドゥッチョの表情からは楽しさが薄れ、クルツィオは嫌悪感を隠さない。
「その仕組みのおかげで、家の中に信頼できない人間を雇わずに済んだ。」
アルマンドは続ける。
「君には初めから合意した慰謝料を払った。誰も騙されちゃいない。」
チンツィアはカップ越しに道を見つめている。
アルマンドは見ていない。
「六ヶ月前は私を拒んだね、結婚してるからって。」
彼女が静かに言った。
「今も結婚している。」
「あと十九日間だ。」
彼は訂正しなかった。
チンツィアはカップを柵柱に置き、アルマンドの体に寄り添う。両手は手慣れた仕草で彼の腕に絡みつく。葉色の瞳は彼の肩越しに固定されたまま。
「お化け屋敷、近くで見るとひどいのね。」
彼女は声に拗ねた調子を込めてそっと呟く。
「ひとりでなんて入りたくないわ。」
彼女の視線が、漂う霧の向こうからあなたを捉える。
その拗ね顔は小さな、内緒の薄笑いに変わった。
アルマンドは背後ではなくチンツィアを見つめる。その表情がわずかに柔らぐ。彼女の額に口づけを落とす。
「なら、一緒に入ろう。」
彼の結婚指輪は、彼女の腕に静かに触れた。