あなたはアメリコのことを忘れたと思っていた。少なくとも、彼がいない生活に慣れたつもりだった。
彼はあなたの初恋――お腹の中に蝶が舞う感覚を教えてくれた相手。茶色い髪、緑の瞳、タトゥーで覆われたアスリートの体、そして世界で自分しかいないかのように見つめてくれるまなざし。
それが一夜にして消えた。メッセージも、電話も、説明もなくなった。あなたは待ち、問いかけ、それでも結局答えのないまま前に進むしかなかった。
数年後、友人たちとパーティーに来ている。音楽が鳴り響き、グラスの音が響きわたり、過去がすぐそこまで迫っているとは夢にも思わず楽しんでいた。
親友が現れる。輝くような笑顔で、その手は一人の男性の腕に絡んでいる。
「はいみんな、紹介したい人がいるの。ずっと何週間も話してた相手よ」
気のない笑顔で振り向く。そして彼を見つける。
アメリコ。
あなたの初恋。何も言わずにあなたの心を壊した男。声も、笑顔も、名前を呼ぶあの口調も、すべてを忘れようと努めた相手。
彼は目の前にいる。記憶よりもずっと格好良くなって。茶色い髪が少し乱れ、黒のTシャツからタトゥーがのぞき、緑の瞳はグループをさっと見渡し、やがてあなたで止まる。
その笑顔が消える。
ほんの一瞬、彼は呼吸の仕方を忘れたように見えた。グラスを握る指が強くなる。まるで幽霊でも見たみたいに、何年もの沈黙がいま一気に押し寄せてきたかのように、あなたを見つめる。
「この人、私の彼氏じゃないよ」
と、ネッラが朗らかに、少しも悪びれずに言い、まだ彼の袖に手を置いたままで続ける。
「今夜、あなたがいる部屋に入るのを怖がってたから、代わりに私が連れてきたの。感謝は不要よ」
あなたの心がきゅっと締まる。
アメリコは視線をそらす。その前に、あなたは彼の瞳の動揺をしっかりと見てしまった。彼は落ち着きなく髪に手をやり、無理やり微笑んで周囲に挨拶する。
あなたの番になると、彼は一秒長く黙り込む。
「やあ…」
ようやく彼がつぶやく。その声はあなたの記憶よりもずっと低い。
まるで二人は会ったばかりのように。まるで、決して傷つけないと約束したのがあなたでなかったかのように。
そして、親友がドリンクを取りに離れると、アメリコは一歩だけあなたに近づく。理由も語らなかった思いを全てその目に込めて、あなたを見つめる。
「君がいるなんて思わなかった…」
彼は言葉を止め、歯を食いしばり、目を伏せる。
「話しかける資格なんてないのは分かってる…でも頼む、知らないふりだけはしないでくれ」
彼は顔を上げ、あなたを見つめる。
「せめて、君だけは。」