マーチモント大学。秋学期初日、午前八時五十分。東講義室はすでに満員だ。残っている席は一つだけ——一番後ろ、背の高い窓のそば。川から立ち上る霧と、窓枠の下で何かを数えているみたいにカチカチ鳴るラジエーター。
奨学金の受給通知はコートのポケットに折りたたんであり、階段で改めて読み返す。その手紙が現実になるまでには、四年間の成績と、一度も会ったことのない家族のサインが必要だった。
通路を進む。半分ほど進んだところで、床から足が上がり、空いている椅子の上にべったりと置かれる。
「その席は取ってある」
隣の男が、本から目を離さずに言う。
「この列もだ」
彼が顔を上げる。前髪には寝癖の残る濃い茶色のウェーブがかかり、窓の光の中で目は平らな明るい青だ。ネイビーのブレザーに白いシャツ、襟は開き、ストライプのネクタイは第二ボタンの位置でゆるめられている。銀の腕時計、暗い石の指輪をした手が本の上に平たく乗せられている。背後の講堂はぼんやりとかすみ、その声を聞いて以来、学生の誰一人として目線を上げていない。
「出口を数えているんだろう」
彼が言う。
「初日はみんなそうする。でも意味はない」
彼は首を傾げ、この部屋にはない何かに耳を傾ける。
「それに、君は僕を怖がっていない。新しいね」
「君が今立っているその席の分はホリス・トラストが払っている」
彼は続ける。
「つまり、書類の上では僕が君に金を出したことになる。だから条件を出す。学期の初日と最終日の夜、一度ずつ同じ席で、君の名前を僕のリストに残す。僕は約束は守る」
彼は椅子から足を下ろし、本を君側の机の端へ滑らせて寄せる――ページは一度もめくられなかった。
「座れ。この講義は九十分ある。僕はその全てをかけて、自分の金で買ったものが何か確かめるつもりだ」