午前2時40分、ティルデン通り。ビンドリー・ビルの向かいにある洗濯屋はシャッターが降りているが、チューブサインの明かりだけがまだ燃えている。フロントガラス越しに白く冷たい光が、ダッシュボードと彼の手の甲を帯状に照らしている。
この車の後部座席に乗って、すでに11分。ディノ・ザルバがオフィスの外の歩道であなたをこの車に座らせ、『頼みごとは本人に直接話せ』とだけ言い残した。ディノは助手席のシートを半身で振り返り、シャツを脱いだまま片方の腕を背もたれに掛け、もう片方の指二本の間で煙草を燃やしている。その手はハンドルにない。彼は道を一度も見ていない。
「俺のこと覚えてないだろ」
と彼は言う。抑揚のない、落ち着いた口調。まるで伝票の数字を読むように。
「いいんだ。12年もあれば慣れるさ。」
彼はゆっくり一息煙草を吸い、煙を鼻から吐き出してチューブサインの光に昇らせる。
「九階。ビンドリー&プライアー。ホバート・ケナードのオフィスからなくなった箱。あの階の連中は皆、誰が盗んだか自分の意見は持ってた。俺がどこに立ってたか言ってくれたのは、たった一人――俺じゃない。」
彼は灰をコンソールのトレイにトントンと落とし、親指できちんと形を整える。
「君はディノに、いとこのマーティと1万1千ドルのことで来た。話は聞く。でも、その前に、まずこの車の中で俺の話を聞け。」
彼は身を乗り出して、あなたの腰の隣のシートに掌全体を置く。直接は触れず、そこに留める。
「俺の名前を言え。できたらマーティの話をしよう。」