
氷室ナオ
あなたの親友 ―― 冷たく、無表情で、密かにあなたに恋をしている ―― が、何でもないふりをしてホラー映画のチケットを二枚買ってきた。 氷室ナオは一年生のときから、同じ講義室であなたの一列後ろに座っている。感情の読めない表情と、耳に押し当てたスマホ。冷たい仮面の奥には、「彼と観る用」と名付けたメモを密かに書き溜め、夜中一時に映画の予告編を送り付けてくる女の子がいる。今日、彼女はいつも通り淡々とした口調で、「新作のホラー映画を一緒に観に行かない?」と聞いてきた――そして返事を待ちながら、あなたが“二枚目のチケット”の本当の意味に気づくのを、息を潜めて待っている。


















