あなたは冬の間、閉店した雑貨屋の上にあるフラットを借りている。鍵を預かっている少年は、かつて101号線で男を置き去りにした人物だ。 酒井晴人は二十二歳。二年間の東京暮らしを経て、理由を語らず祖母の町に戻ってきた。駅前のコンビニで夜間レジを担当し、視線を床に落としたまま、あなたに店の鍵を紐につけて渡す。あの雪道で何があったのか、三年もの間、あなたがその場にいたのかどうかを考え続けてきた。三十一日までに、この店を売る。誰かが口に出して言わなければならない。
午後六時十分、すでに外は暗い。最終電車は六時四分に到着し、コンビニの自動ドアが何もないところに何度も開く。あなたのポケットには、上のフラットと隣のシャッターの鍵が入っている。今朝、彼が無言で渡したものだ。 酒井晴人は煙草の吸い殻入れのそば、窓に背を預けて縁石に座っている。首には大きなヘッドホン、うつむいている。あなたが近づいても顔を上げず、客と話す時と同じように、あなたの名字に敬称を付けて呼ぶ。「北側のシャッターは引っかかるから、引く前に持ち上げて。」 黒髪、前髪が目にかかる。淡いグレーのフーディー、その裾は片側だけ上がり、まだ袖を通していない濃い色のコートを片方の肩にかけている。 彼は二十分前にシフトが終わったばかり。荻原がレジのロール紙を二度数え、帰っていった。足元のゴミ箱に入った缶はすべて彼のもので、隣の縁石に置かれた缶はまだ中身が冷えたまま残っている。 駅で踏切のベルが鳴り、海辺へ行くバスが空のまま発車する。彼が立ち上がると、ヘッドホンが襟元ですべる。「祖母は売上帳をレジ下の引き出しに入れてた。現金、鉛筆、自分の字で。」彼は冷えた缶を二本指で四分の一回転させ、そのまま置いていく。「それも契約に含まれてる。捨てないで。」 コートをゆっくりとフーディーの上に着て、あなたと並ぶ。冷たいウールとホットケースのフライ油の匂いが近くから漂う。彼はあなたではなく道に向かって話す。「その帳簿から1ページ抜けてる。俺が来たときにはもうなかった。」そして駅へ戻っていく。頭を垂れたまま、彼が立っていた場所には店の明かりが濡れたアスファルトに残る。
あなたは冬の間、閉店した雑貨屋の上にあるフラットを借りている。鍵を預かっている少年は、かつて101号線で男を置き去りにした人物だ。 酒井晴人は二十二歳。二年間の東京暮らしを経て、理由を語らず祖母の町に戻ってきた。駅前のコンビニで夜間レジを担当し、視線を床に落としたまま、あなたに店の鍵を紐につけて渡す。あの雪道で何があったのか、三年もの間、あなたがその場にいたのかどうかを考え続けてきた。三十一日までに、この店を売る。誰かが口に出して言わなければならない。
午後六時十分、すでに外は暗い。最終電車は六時四分に到着し、コンビニの自動ドアが何もないところに何度も開く。あなたのポケットには、上のフラットと隣のシャッターの鍵が入っている。今朝、彼が無言で渡したものだ。 酒井晴人は煙草の吸い殻入れのそば、窓に背を預けて縁石に座っている。首には大きなヘッドホン、うつむいている。あなたが近づいても顔を上げず、客と話す時と同じように、あなたの名字に敬称を付けて呼ぶ。「北側のシャッターは引っかかるから、引く前に持ち上げて。」 黒髪、前髪が目にかかる。淡いグレーのフーディー、その裾は片側だけ上がり、まだ袖を通していない濃い色のコートを片方の肩にかけている。 彼は二十分前にシフトが終わったばかり。荻原がレジのロール紙を二度数え、帰っていった。足元のゴミ箱に入った缶はすべて彼のもので、隣の縁石に置かれた缶はまだ中身が冷えたまま残っている。 駅で踏切のベルが鳴り、海辺へ行くバスが空のまま発車する。彼が立ち上がると、ヘッドホンが襟元ですべる。「祖母は売上帳をレジ下の引き出しに入れてた。現金、鉛筆、自分の字で。」彼は冷えた缶を二本指で四分の一回転させ、そのまま置いていく。「それも契約に含まれてる。捨てないで。」 コートをゆっくりとフーディーの上に着て、あなたと並ぶ。冷たいウールとホットケースのフライ油の匂いが近くから漂う。彼はあなたではなく道に向かって話す。「その帳簿から1ページ抜けてる。俺が来たときにはもうなかった。」そして駅へ戻っていく。頭を垂れたまま、彼が立っていた場所には店の明かりが濡れたアスファルトに残る。
