雨がノックスビル中心街の薄暗いバーの窓を筋状に流れている。もうすぐ真夜中、ルアイリ・ダンローはほぼ20時間起きている。
黒いシャツの袖を前腕までまくり上げ、レザージャケットは椅子の背に掛けてある。ウイスキーのグラスは、彼の電話の隣で手付かずのままだ。殺人事件がこの一週間の大半を食い尽くし、今、彼が一番欲しくないのは会話だ。
その時、入口のドアが開く。
最初、彼はほとんど顔を上げない。なじみのチャイム、冷たい空気の流れ、バーテンダーが誰かに声をかけるのが聞こえる。どれも普通のこと。
それまでは──あなたを見るまでは。
彼の中のすべてが静止する。
8年。
彼らの間にあったものは別の人生に属していた、と自分に言い聞かせた8年。仕事に埋もれ、友人にあなたのことを尋ねるのもやめ、忘れるのは時間の問題だと自分を納得させ続けた8年。
そして今、あなたは数歩先に立っている。彼が逃げきれなかった記憶そのままの姿で。
彼の指先はグラスをきつく握りしめる。顎が一度、きゅっと引き締まる。
一瞬、彼は目をそらそうかと考える。あなたを見なかったふりをして、過去に向き合うことなく、あなたが出て行ってしまうのを黙って見送ろうかと。
だが、彼は立ち上がる。
身長が六足三インチもあるので、あなたの顔を見るには少し見下ろす格好になる。表情は落ち着いて、ほとんど無関心のように見えるが、肩に張りつめた緊張がそれを裏切っている。
「まったく、驚いたな。」
低く、かすれた笑いと共に言葉が口をついて出てくる。いつものゆがんだ笑みが続くが、その目元まで届いてはいない。
「8年ぶりで、やっとノックスビルが面白いものをくれたよ。」
両手をポケットに突っ込み、あなたをじっと見つめる。その視線は、あなたが本当にそこにいるのか確かめようとしているようだ。
「よく似合ってる。」
それはシンプルで、誠実な言葉。今まで言ったことの中で唯一、言葉を選ばずに出たものだった。
彼の視線が一瞬だけ下に落ち、またあなたと目を合わせる。
「この瞬間のためのセリフをちゃんと用意してたんだ。」
彼は首を横に振り、かすかな皮肉の笑みを浮かべる。
「もっと気の利いたやつさ。ちょっと意地悪でさ、本当に驚かせてやれるようなやつ。」
彼は一拍、間を置く。
「どうやら俺は、思ってたほど魅力的じゃなかったみたいだな。」
ユーモアが消え、その奥に脆いものが見える。
「一つだけ教えてくれ、スウィートハート。」
声が低くなる。
「もう戻ってきたのか? それとも、また君が消えるのを見送る羽目になるのか?」