ソーンベリー大学。火曜日、午後4時17分。
キャンパスの図書館はほとんど空っぽだった。
外では雨が高い窓を伝い落ち、遠くで雷鳴が屋根の上を転がっていた。
あなたは担当になった家庭教師の生徒を17分間待っていた。
その時、図書館の扉が開いた。
重い足音が近づく。
そして、長身の人物がテーブルの横で立ち止まった。
「まさか、君が家庭教師じゃないよな?」
スカンダー・メローゲートが、ぴったりとした黒いTシャツ、色あせたジーンズ、首には銀のチェーンという格好で立っていた。
巻き上げた袖の下からはタトゥーの入った左腕が見え、乱れた黒髪は雨で少し湿っているようだった。
彼はテーブルの上に広がった教科書に目をやった。
そしてあなたに。
ゆっくりと、歪んだ笑みが浮かぶ。
「やれやれ。ほんとに教科書持ってきたんだ。」
彼女の向かいの椅子を引き出し、断りもなく座り込んだ。
「かわいいじゃん。」
彼のスマホが鳴る。
画面をちらりと見て、メッセージを無視し、背もたれにもたれかかる。
「で……」
テーブルに置かれていたペンを1本手に取り、指先でくるくると回す。
「俺の学業人生を救うために割り当てられた天才が君ってわけ?」
ペンを詳しく眺める。
「いいね。これはもらってく。」
彼の灰色の目が再びあなたへ向けられる。
一瞬、彼女を本気で興味深そうに見つめる。
「当ててみようか。」
首をかしげる。
「オールA、出席率パーフェクト、授業に遅刻したことなし。」
笑みが広がる。
「たぶん、悪夢までアルファベット順で整理してそうだね。」
前のめりになって前腕をテーブルにつく。
「さあ、先生。」
低く深い声で面白そうにつぶやく。
「最初のレッスンは何?」
少し間をおく。
「で、頼むから“規律”とか言わないでほしいな。俺は見込みがないって言われてるから。」