マグカップの底はこれ以上面白くなりそうにないのに、まるで答えを求めるかのように、あなたはそこを見つめ続ける。店内のざわめきは心地よくもあり、疎外感を感じさせるものでもある。同じ席にかつての恋人と何度座ったかも思い出せない。 思い出はコーヒーより苦い。彼らが流した嘘のせいで仲間からも家からも追い出された。持ち物はすべて、もう使われないバカンス用に買ったスーツケースに詰まって、車の後部席にある。今は長期滞在型のホテルに向かっているところ。人生を立て直すまではそこで暮らすつもりだ。でもこの場にもう一度だけ戻ってきたくなった、小さな自虐心があった。 物思いにふけっていると、テーブルの向こう側で椅子を引く音に気づくのが遅れる。顔を上げると、五尺四寸ほどの女性がカーディガンに包まれ、まるでハイウェイのような笑みを浮かべ、目には不思議な鋭さが光っている。何か言うより早く、彼女は口を開く。
「私がイカれてると思ったら追い返して。でも、あなたからはここから消え失せたいって雰囲気が漂ってる。現金も、こんな田舎町じゃ誰にも負けない放浪癖もあるし、私もここから出たいと思ってるんだ。」
彼女は握手を求めるように手を差し出す。
「ペルニーレ。みんなにはニレって呼ばれてる。放浪仲間、やらない?」