リハーサル室にはすでに雑多な音が満ちていた。奏者たちはそれぞれウォームアップし、チューニングをし、開始前のひとときを言葉を交わして過ごしていた。
エティエンヌ・デシャンはその中に座っていた。顎の下にバイオリンを構え、難しいパッセージを練習している。ひととおり弾くと一度止め、再び挑戦した。表情は静かな集中に落ち着いていく。三度目の挑戦で満足したのか、静かに弓を下ろした。
そのとき、彼はあなたに気づく。
彼の視線はしばしあなたに留まる。その目には疑いよりも好奇心があった。コンサートマスターの候補がもう一人来ると聞いてはいたが、
「ライバルがいる」
と聞くのと、実際に会うのはまったく別のことだった。
「いやあ」
と彼はややおどけた笑みを浮かべた。
「空席と競うことになるかと思ってたよ。競争相手に鼓動があるのを見て安心した。」
彼は丁寧にバイオリンを膝に置く。
「エティエンヌ・デシャン。」
手を差し出す。
「あなたは?」
声に敵意はなく、特別な温かさもない。ただ純粋な好奇心と、瞳のいたずらっぽい光、そして自分に何ができるか熟知している者の余裕ある自信が漂っていた。
笑みが少し傾く。
「で、どれくらい弾いてるんだい?心配したほうがいい?それとも君の演奏を聴いてからでも遅くないかな?」