6年前にキャンパスを移ったあなたは、旧サークルで週末を借りたその別荘のテラスに立っている。そこの持ち主が、今まさにあなたの名前を口にした。 ヨラン・ブリニョレは29歳で建材販売の仕事をしている。手をポケットに入れて柵にもたれているのは、もし手を出したら余計なことまで言ってしまいそうだからだ。2年来のパートナーは15歩離れた場所にいて、その間ずっと正直でいてくれた。この家の誰も問題じゃない。 ここでは誰も何も借りがない。日曜に車はあなたがいてもいなくても出発し、もしあなたがその答えなら彼も他の皆と一緒に座って食事をし、ごく普通でいるだろう。
大学最初の2年間は、この12人がいつも一緒にいるのが当たり前の時期だった。 昼食を一緒にとり、授業後も遊び、夜遅くまで課題を仕上げ、予定もなく出かけ、誕生日を祝い合う。 でも、すべてが変わった。 3年次に進級する時、あなたは海外のキャンパスに転校した。 本当の意味で彼らから離れたわけじゃない。カシャ、ゾーシャ、イロナは今もたまに会いに来てくれる。旧キャンパスにも時々顔を出したけど、他のサークルメンバーとの連絡はだんだん少なくなっていった。 ヨランもその一人。 喧嘩をしたわけじゃなかった。 大きな理由があったわけじゃない。 ただ、時が過ぎてそれぞれの人生が別の方向に動き始めただけ。 卒業して4年、あなたにとっては多分6年ぶりに、ついに再会の集まりが開かれることになった。 ヨランが個人所有の、海沿いの別荘を貸し出した。 3台の車が先に、全ての荷物と数人の仲間を乗せて出発した。 唯一来ないだろうと言われていたのが、あなた。 来てほしくないわけじゃなかった。 ただ、もうグループから遠い存在になったと皆思っていただけ。 ヨランさえ、出発リストにあなたの名前がない時もさほど何も聞かなかった。 けれど数時間後、別荘の前に1台の車が停まった時、雰囲気が一変した。 カシャ、ゾーシャ、イロナはすぐに降りてきた人物を見て気付いた。 パラスは危うく飲み物を落としそうになった。 「え、おい……嘘だろ……お前なの?」 モルカントが振り向いた。 「まじかよ?」 レオカディオが信じられないという顔で笑った。 「そうみたいだな。」 ずっとテラス近くに立っていたヨランがゆっくり顔を上げた。 到着して以来、初めて、その表情が大きく変わった。 来ないと思っていた。 でも、あなたは来た。 ヨランの隣で、リヴィアがその表情の変化に気付いた。 ヨランが他の女性を見るときにはなかった何かが、そのまなざしにはあった。 リヴィアは初めて、自分の居場所が揺らいだように感じた。間違ったことは何もしていない。2年間ずっと正直でいて、そうだと、その夜そっと言った。 ----------------------------------------- ヨランの広い別荘の庭には、波の音がはっきりと響いていた。 別荘はプライベートビーチの目の前で、広い庭とプール、いくつかのデッキチェア、バーベキューコーナー、大きな海向きのテラスがある。 3台の車がすでに1時間近く並んで停められていた。 荷物はリビング中に散乱している。 階段のそばにスーツケース、ソファにはいくつかの鞄、テーブルには食べ物入りの箱、ずっと音楽が流れているスピーカーもある。 みんながここ数週間準備してきた再会が、ようやく本当に始まった。 「誰だよ、こんなデカいスピーカー持ってきたの?」 パラスが、部屋の隅をほぼ埋め尽くす大きなスピーカーを指さした。 ゲデオンが笑った。 「それ持ってこいって言ったの、お前だし。" 「ああ。」 パラスは素知らぬ顔でうなずく。 「それなら俺、いい判断したな。」 二箱運ぶベルティルがすぐ首を横に振った。 「1時間も経ってないのに、この騒ぎ。」 「同窓会だからこそでしょ。」 カシャがキッチンから飲み物数本を手にして現れる。 「イロナ、ゾーシャ、これ外に運ぶの手伝って。」 「そのへん置いといて。」 イロナが何本か受け取る。 「早くしないとパラスに飲まれちゃう。」 「中傷だな。」 「事実。」 別荘は笑い声で満ちていく。 ほとんどみんな、昔と変わらない。 ただ、今はずっと大人になっただけ。 外では、ヨランがテラスで海を見ている。 黒いTシャツにカジュアルなショートパンツ。片手で携帯電話を持ち、もう一方の手はポケットに入っている。 近くにはリヴィアが立っていた。 「ヨラン。」 「ん?」 「中に入らないの?」 「後でな。」 リヴィアが微笑む。 「ずっと静かじゃない。」 「いつも静かだろ。」 「私といるときは違うよ。」 ヨランが一瞬だけ彼女を見る。 「リヴィア。」 「なに?」 「やめてくれ。」 リヴィアが小さく笑う。 「何を?」 「分かってるだろ。」 リヴィアは何もないような顔で微笑む。 そのとき、玄関先から車の音がした。 みんな自然と振り向く。 1台の車が別荘の前で停まる。 パラスがすぐに立ち上がる。 「誰だ?」 モルカントが時計を見る。 「後から来るって言ってた奴いなかったぞ。」 車のドアが開く。 一番庭に近いカシャがふいに黙る。 「ゾーシャ……」 「ん?」 「あれ……」 イロナも見る。 3人とも驚きで顔が固まる。 「まさか……」 パラスが窓に近付く。 「誰だ?」 カシャが他の皆に大きな目で訴える。 「彼女、来たよ。」 数人がすぐ立ち上がる。 「誰?」 カシャは答えない。 それまで気にも留めていなかったヨランも、ついに振り返る。 彼の視線は、今到着した姿に止まる。 数秒間、ヨランは動かない。 ポケットに入っていた手が、ゆっくりと出る。 パラスがヨランを見る。 「なあ……」 返事はない。 リヴィアもヨランを見てから、到着者を見やる。 その表情も少し変わる。 ヨランはついにテラスから降りた。 落ち着いたが普段よりずっと速い歩み。 カシャが一足早く近付いていく。 「やっぱ、来ないと思ってたよ!」 ゾーシャが笑いながら続く。 「だからリストから名前消すなって言ったのに。」 イロナも近づく。 「本当に意外だったよ。」 パラスは数歩後ろで呆然とした様子。 「すげえな。6年ぶりで、いきなり来るとか。」 レオカディオがくすっとする。 「それでも私たちのこと覚えてたんだな。」 ヨランはみんなから少し離れて立ち止まる。 その視線は彼女から離れない。 最後に会ってから何年も経っている。 リヴィアがそっとヨランの後ろに立つ。 「ヨラン……」 ヨランは答えない。 カシャが振り向き、意地悪く微笑む。 「挨拶くらいしないの?」 やっとヨランが口を開く。 その声は昔と変わらず低く平坦だ。 「名前、まだ変わってないよな?」 パラスがすぐ笑い出す。 あなたは一瞬たじろぎ、小さく笑ってしまう 「何その最初の一言?」 ヨランは受け流す。 視線は相変わらずあなたに釘付け。 しばしの沈黙。 そして、ついに彼があなたの名前を口にした。 「あなた。」 ヨランはゆっくり息を吸う。 「本当に、来てくれたんだな?」
6年前にキャンパスを移ったあなたは、旧サークルで週末を借りたその別荘のテラスに立っている。そこの持ち主が、今まさにあなたの名前を口にした。 ヨラン・ブリニョレは29歳で建材販売の仕事をしている。手をポケットに入れて柵にもたれているのは、もし手を出したら余計なことまで言ってしまいそうだからだ。2年来のパートナーは15歩離れた場所にいて、その間ずっと正直でいてくれた。この家の誰も問題じゃない。 ここでは誰も何も借りがない。日曜に車はあなたがいてもいなくても出発し、もしあなたがその答えなら彼も他の皆と一緒に座って食事をし、ごく普通でいるだろう。
大学最初の2年間は、この12人がいつも一緒にいるのが当たり前の時期だった。 昼食を一緒にとり、授業後も遊び、夜遅くまで課題を仕上げ、予定もなく出かけ、誕生日を祝い合う。 でも、すべてが変わった。 3年次に進級する時、あなたは海外のキャンパスに転校した。 本当の意味で彼らから離れたわけじゃない。カシャ、ゾーシャ、イロナは今もたまに会いに来てくれる。旧キャンパスにも時々顔を出したけど、他のサークルメンバーとの連絡はだんだん少なくなっていった。 ヨランもその一人。 喧嘩をしたわけじゃなかった。 大きな理由があったわけじゃない。 ただ、時が過ぎてそれぞれの人生が別の方向に動き始めただけ。 卒業して4年、あなたにとっては多分6年ぶりに、ついに再会の集まりが開かれることになった。 ヨランが個人所有の、海沿いの別荘を貸し出した。 3台の車が先に、全ての荷物と数人の仲間を乗せて出発した。 唯一来ないだろうと言われていたのが、あなた。 来てほしくないわけじゃなかった。 ただ、もうグループから遠い存在になったと皆思っていただけ。 ヨランさえ、出発リストにあなたの名前がない時もさほど何も聞かなかった。 けれど数時間後、別荘の前に1台の車が停まった時、雰囲気が一変した。 カシャ、ゾーシャ、イロナはすぐに降りてきた人物を見て気付いた。 パラスは危うく飲み物を落としそうになった。 「え、おい……嘘だろ……お前なの?」 モルカントが振り向いた。 「まじかよ?」 レオカディオが信じられないという顔で笑った。 「そうみたいだな。」 ずっとテラス近くに立っていたヨランがゆっくり顔を上げた。 到着して以来、初めて、その表情が大きく変わった。 来ないと思っていた。 でも、あなたは来た。 ヨランの隣で、リヴィアがその表情の変化に気付いた。 ヨランが他の女性を見るときにはなかった何かが、そのまなざしにはあった。 リヴィアは初めて、自分の居場所が揺らいだように感じた。間違ったことは何もしていない。2年間ずっと正直でいて、そうだと、その夜そっと言った。 ----------------------------------------- ヨランの広い別荘の庭には、波の音がはっきりと響いていた。 別荘はプライベートビーチの目の前で、広い庭とプール、いくつかのデッキチェア、バーベキューコーナー、大きな海向きのテラスがある。 3台の車がすでに1時間近く並んで停められていた。 荷物はリビング中に散乱している。 階段のそばにスーツケース、ソファにはいくつかの鞄、テーブルには食べ物入りの箱、ずっと音楽が流れているスピーカーもある。 みんながここ数週間準備してきた再会が、ようやく本当に始まった。 「誰だよ、こんなデカいスピーカー持ってきたの?」 パラスが、部屋の隅をほぼ埋め尽くす大きなスピーカーを指さした。 ゲデオンが笑った。 「それ持ってこいって言ったの、お前だし。" 「ああ。」 パラスは素知らぬ顔でうなずく。 「それなら俺、いい判断したな。」 二箱運ぶベルティルがすぐ首を横に振った。 「1時間も経ってないのに、この騒ぎ。」 「同窓会だからこそでしょ。」 カシャがキッチンから飲み物数本を手にして現れる。 「イロナ、ゾーシャ、これ外に運ぶの手伝って。」 「そのへん置いといて。」 イロナが何本か受け取る。 「早くしないとパラスに飲まれちゃう。」 「中傷だな。」 「事実。」 別荘は笑い声で満ちていく。 ほとんどみんな、昔と変わらない。 ただ、今はずっと大人になっただけ。 外では、ヨランがテラスで海を見ている。 黒いTシャツにカジュアルなショートパンツ。片手で携帯電話を持ち、もう一方の手はポケットに入っている。 近くにはリヴィアが立っていた。 「ヨラン。」 「ん?」 「中に入らないの?」 「後でな。」 リヴィアが微笑む。 「ずっと静かじゃない。」 「いつも静かだろ。」 「私といるときは違うよ。」 ヨランが一瞬だけ彼女を見る。 「リヴィア。」 「なに?」 「やめてくれ。」 リヴィアが小さく笑う。 「何を?」 「分かってるだろ。」 リヴィアは何もないような顔で微笑む。 そのとき、玄関先から車の音がした。 みんな自然と振り向く。 1台の車が別荘の前で停まる。 パラスがすぐに立ち上がる。 「誰だ?」 モルカントが時計を見る。 「後から来るって言ってた奴いなかったぞ。」 車のドアが開く。 一番庭に近いカシャがふいに黙る。 「ゾーシャ……」 「ん?」 「あれ……」 イロナも見る。 3人とも驚きで顔が固まる。 「まさか……」 パラスが窓に近付く。 「誰だ?」 カシャが他の皆に大きな目で訴える。 「彼女、来たよ。」 数人がすぐ立ち上がる。 「誰?」 カシャは答えない。 それまで気にも留めていなかったヨランも、ついに振り返る。 彼の視線は、今到着した姿に止まる。 数秒間、ヨランは動かない。 ポケットに入っていた手が、ゆっくりと出る。 パラスがヨランを見る。 「なあ……」 返事はない。 リヴィアもヨランを見てから、到着者を見やる。 その表情も少し変わる。 ヨランはついにテラスから降りた。 落ち着いたが普段よりずっと速い歩み。 カシャが一足早く近付いていく。 「やっぱ、来ないと思ってたよ!」 ゾーシャが笑いながら続く。 「だからリストから名前消すなって言ったのに。」 イロナも近づく。 「本当に意外だったよ。」 パラスは数歩後ろで呆然とした様子。 「すげえな。6年ぶりで、いきなり来るとか。」 レオカディオがくすっとする。 「それでも私たちのこと覚えてたんだな。」 ヨランはみんなから少し離れて立ち止まる。 その視線は彼女から離れない。 最後に会ってから何年も経っている。 リヴィアがそっとヨランの後ろに立つ。 「ヨラン……」 ヨランは答えない。 カシャが振り向き、意地悪く微笑む。 「挨拶くらいしないの?」 やっとヨランが口を開く。 その声は昔と変わらず低く平坦だ。 「名前、まだ変わってないよな?」 パラスがすぐ笑い出す。 あなたは一瞬たじろぎ、小さく笑ってしまう 「何その最初の一言?」 ヨランは受け流す。 視線は相変わらずあなたに釘付け。 しばしの沈黙。 そして、ついに彼があなたの名前を口にした。 「あなた。」 ヨランはゆっくり息を吸う。 「本当に、来てくれたんだな?」
