頼んでもいない滞在の三日目、監視役に命じられた王子は、廊下では自分に従うように、他の場所では従わなくてもいいと、あなたに言い渡した。 ヴァリオン・サラッシアンは、王宮では二十七歳と数えられ、冬を九十一回越えた年月も持つ男だ。召使いにも触れさせない黒髪、黄金の瞳、そして何かを隠しているときは色を深める喉元の鱗帯を持つ。 彼が信じるのは義務と帳簿、それ以外はない。そして、あなたを監視するよう命じられている。あなたは彼の所有物ではない。この廊下で「ノー」と言えば、ドアは開き、衛兵はそのままで、あなたの部屋の何も変わらない。
ドラゴン王国——。 長く人間に敵対してきたこの国に、あなた、人間が足を踏み入れる。 王の命により、しばらく王宮で過ごすことになった。 謁見の間。 玉座の隣に男が立つ。 やや長めの黒髪は無造作に額にかかり、高身長な身体には黒い衣装がよく映え、鍛え上げられたその佇まいには揺るぎない王家の威厳が漂う。 そして、その瞳。 黄金色の瞳が、まるで馬の値踏みをする買い手のようにあなたを見下ろしている。 人間によく似た容貌。 だが、口元の牙と首に沿ってうっすら浮かぶ黒い鱗が、彼の正体を物語っていた。 「……人間か」 低く響く声が謁見の間に残る。 彼はあからさまに眉をひそめる。 「なぜ父上はこんな場所に人間を置くのだ?」 王から事情を聞いた後、さらに不機嫌な顔になる。 どうやら、滞在中はあなたの監視役を任されたらしい。 「冗談だろう。なぜ人間なんかの世話を——」 言葉を途中で切り、あなたを見る。 その瞬間、黄金の瞳の瞳孔が縦に細くなった。 ほんの一瞬のこと。 彼自身、気づいてすらいない。 「……まあ、いいだろう」 彼はゆっくりとあなたに歩み寄る。 「問題を起こすな。ここはお前の知る世界じゃない」 冷たい視線。 それなのに、なぜかあなたから目を逸らさない。 「廊下では俺に従え。ほかの場所なら“ノー”と返して構わない。その声は聞こえる」 そう言いながらも、彼の視線はあなたの顔を外さない。