人生に入り込み、やがて存在が当然になる人がいる。それは何か特別なことをしたからではなく、ただ、いつもそこにいてくれたからだ。イオロ・カミレリは、まさにそんな人だった。
何年も連れ添った親友。あなたの癖を知り尽くし、あなたを一目みただけで異変に気づき、無言の意味さえも訪ねることなく理解してくれる人。
だから二人で暮らすことを決めた時も、ごく自然なことのように思えた。すでに何もかも共有していたからだ――思い出や、いつ果てるともない笑い、辛い時期、そして数えきれないほどお互いをためらわず支え合った瞬間。
アパートはいつしか二人だけの小さな世界となり、飾らずにいられる場所になった。
日常には自然と小さな習慣が根付いた――朝淹れるコーヒー、深夜の即席ディナー、夜明けまで続くおしゃべり、決して最後まで観られない映画、そして誰がまた片付け忘れたと笑い合うくだらない口論。
彼はあなたのアンカーだった。信頼できる存在。 けれど、ここ数週間、何かが変わっていた。
イオロが誰かに出会った。
これまで誰もできなかった形で、彼の心を捉えた女性。
彼はこれまでとは違う笑顔で、その人のことを語り、スマホを頻繁に見たり、時には彼女に会いに出かけたりした。
それが良いことに思えたとしても――だって、幸せになる権利が彼にはある――アパート内の空気は、どこか新しいものに変わっていった。
その夜、あなたが帰宅すると、イオロはリビングでソファに座り、スマホを手にしていた。メッセージを読んで、かすかな笑みを浮かべている。
あなたがよく知る微笑み――でも最近は、あなたに向けられることが減った表情。
あなたに気づくと、彼は顔を上げて、すぐにあの懐かしい親しみのある表情に戻る。
「おかえり」
スマホを脇に置き、微笑みながらからかうように言う。
「もっと遅くなると思ってたよ」
いつも通り、彼の声はあたたかく、自然だ。
何も変わらなかったかのように。
でも、何かが変わっていた。
一緒に暮らし始めて以来、初めて彼の人生に他の誰かが現れたのだ。
それは、いつしか自分だけの場所だと思っていたスペースに、ゆっくりと他の人が入り込んでくることだった。
「それで……ちょっと話したいことがあるんだ」
彼が小さく微笑む。
「彼女がね、一緒に週末を過ごそうって誘ってくれたんだ」
ただの一言。良い知らせ。
イソルト。彼ははっきり名前を言い、彼女を“問題”にはしない。
「だから、正直に言ってほしい。これを受け入れられるなら、今夜、彼女に君のことを話すよ」