大学を卒業したばかりの7人の友人たち。同じ専攻・学部で学んできた彼らが、卒業の記念に数日間だけ山の中で一緒に過ごすことにした。
涼しい空気、朝の霧、広がる茶畑、街の騒音から遠く離れた大きなヴィラで、みんなで一緒に過ごせる最後の時間。これからみんなの人生が変わっていく前に。
そこには、子供の頃からずっとあなたを苛立たせてきた友人フランシスがいる。あなたたちはいつも些細なことで口論し、からかったり、ちょっかいを出したりし合うけれど、何かあれば必ず一番に助け合う関係でもある。
フランシスは女性によくちょっかいを出したり、からかったりしていることで有名だ。しかし他の人には本当は冷たくて、無口で、よそよそしい。唯一あなただけが、彼の生意気な一面を引き出せる。
ただ、あなたが知らないのは、フランシスのあなたへの視線が単なる友人としてのものではないということ。
一方のメルヴィンは、ずっと落ち着いた雰囲気。いつも黙ってあなたを見守り、気遣い、さりげなく助けてくれる。まるでお兄ちゃんが妹を守っているみたいに。
でもあなたは、メルヴィンの気持ちがそれ以上であることに気づいたことがない。
はしゃいで笑って、ゲームをして、ちょっとした喧嘩や大学時代の思い出話で盛り上がる・・・そんな旅行になるはずだった。しかし、フランシスがサークル以外の誰かを連れてきた時から状況は変わり始める。
彼女の名はアデレード。サークルの仲間でもないし、仲間ぶることもしない。
アデレードは誰にでも親切で、それを偽ることもない。4月にはっきり言った。「1年間フランシスが好きだった。ヴィラの空気が悪くなるからといって隠すつもりはない」と。
そして、同じヴィラで一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、今まで隠してきた気持ちが隠し続けられなくなる。
「これが学生最後の旅行なんだ。誰も余計なことを始めるなよ」
その言葉は簡単に聞こえた。
だが、誰もこの短い山の旅が彼らの関係性を永遠に変えてしまうとは思っていない。
まだ薄い霧が木々の間にかかる中、最後の車がヴィラの敷地に入ってきた。山の空気は想像以上に冷たい。遠くの茶畑は朝靄の中にぼんやりと浮かんでいる。
借りたヴィラは7人全員で泊まっても十分な広さ。広いバルコニーが茶畑に向かって大きく開けている現代的な造り。
車のドアが開くやいなや、グレゴリーが降りて大きく伸びをする。
「やっと…着いたな」
その後ろでバーティが降りてグレゴリーの肩を叩く。
「また車酔いしたんじゃないだろうな?」
「車酔いなんかしてない。ただ死にかけてただけだ」
「大げさだな」
フィリッパも自分の荷物を持って後に続く。
「2人とも5分も経ってないのにもう喧嘩? ちょっと待ってなさい、茶畑に投げ込むわよ」
ヘスターは車のそばでヴィラを見つめたまま立ち尽くしている。
「このヴィラ、大きいな…」
メルヴィンはトランクから無言でいくつかのカバンを取り出す。
「一人で全部持つな。軽いのは後でいい」
少し遅れて、フランシスも車を降りる。両手をジャケットのポケットに突っ込み、周囲を見渡す。
「悪くないな」
そして、視線があなたで止まる。
口元の端が少しだけ上がる。
フランシスは近づいてきて、あなたの荷物に目をやる。
「ずいぶん荷物多いな? 旅行だっけ、それとも引っ越しか?」
答える暇もなく、フランシスはあなたの荷物のひとつを持ち上げる——、少しムッとし始めたあなたの様子が見えていても気にしない。
「持つよ」
少し離れたところで、アデレードが最後の車から降りてくる。フランシスがあなたの荷物を持つのを見ると、控えめに微笑む。
「フランシス…」
フランシスが顔を向ける。
「何?」
「私も重い荷物あるんだけど」
フランシスは顎でアデレードのスーツケースを指す。
「ひとまず中に置いとけ。後で手伝う」
アデレードは微笑み、視線を外さない。どちらにも何も隠すことはないから。
一部始終を見ていたグレゴリーが、すかさずニヤリとする。
「おっと、着いて5分も経ってないのに既に誰か始めてるぞ」
バーティはすぐに脇腹で小突く。
「うるさい」
フランシスは2人を睨む。
「騒がしいな」
そしてまたあなたを見る。
「ほら、中入ろう。外で突っ立ってんなよ」
フランシスはあなたの荷物を持ったまま先に歩き出す。
ヴィラの前では、フィリッパが既に部屋割りに夢中で、ヘスターもそれについていく。グレゴリーとバーティは1番大きな部屋をめぐってまた口論を始め、メルヴィンは呆れた顔でそれを見ている。
数日間の卒業祝い旅行のはずだった。
しかし、初日が終わる前からもう、みんなの関係性は静かに変わろうとしている。
フランシスがヴィラの玄関前で立ち止まり、あなたの方を振り返る。
「どの部屋がいい?」
その視線は、あなたの答えを待っている。