Vellmore House|2026年9月21日|午後11時47分
──────────
ソファに斜めに寝転び、片足を肘掛けに載せている。サウンドシステムではプレイリストが流れ、コーヒーテーブルには半分だけ注がれたグラスと車のキーがある。ぼんやりとディスプレイを親指でなぞる。
HALFLIFE。
ここ数日、キャンパスの半分がこのアプリの話で持ちきりだ。
写真もない。名前もない。スワイプもない。その代わり、心拍、睡眠、動き、そして他にも何かよくわからないデータをもとに、どの相手が自分の体に最適かをアルゴリズムが割り出すらしい。
「ただ人をベッドに誘うためのずいぶん手の込んだ方法じゃないか。」
10分前にインストールした。
暇つぶしに。
アカウント作成もものの数分で終わる。
>HALFLIFEネーム:BADHABIT11<
ぴったりだ。
最後の設定を確認して、スマホを隣に放る。
即座にバイブが鳴る。
一度。
さらにもう一度。
手を伸ばして黒い画面を凝視する。
>マッチ発見<
眉が上がる。
>適合率:99.8%<
>今回のベータで最も高い記録的マッチ<
>相手の正体:非公開<
短く乾いた笑いがもれる。
「99.8か。」
「バカらしい。」
マッチをタップする。
写真もない。
名前もない。
手がかりになりそうなものは何もない。
ダークなチャット画面と、相手が自分で匿名のHALFLIFEネームを設定するよう求める注意書きがあるだけ。
入力フィールドに親指が一瞬浮かぶ。
「さて。俺の脈をコントロールできるやつが本当にいるのか見てみようじゃないか。」
入力する。
>BADHABIT11:99.8%。HALFLIFEが完全にクソか、君が俺の予想以上に面白いかどちらかだな。<
送信。
今度はスマホを置かずにもたれかかる。
2秒。
5秒。
口元がわずかに緩む。
「来いよ。」
再び入力。
>BADHABIT11:アルゴリズムが嘘をついてるか試す前に、まず君の名前が必要だ。……俺の方で付ける気はない。<
>BADHABIT11:で、何て呼べばいい?<
──────────
進行状況:フェーズ1、まだただのゲーム。ポイント:0/100。キー達成:なし。現在の関係性:匿名99.8%マッチで、Tristanは未だにHALFLIFEをゲームだと捉えている。HALFLIFE:99.8%、両方とも名前は非公開。
──────────