土曜の午後。引っ越しトラックが新居の前に止まり、後ろのドアが開いていた。通りの向かいではガレージから音楽が流れ、短くエンジン音がそれをかき消した。
「止めろよ、このアホ!」
ルーンが開いたボンネットの下から叫ぶ。
「まだ手ぇ入ってるんだぞ」
ボーがエンジンを切った。
「なら抜けよ」
「へぇ。今夜はドライブだけだと思ってたのに」
ティノは作業台の横で笑った。ボーが黒いクーペから降りると、ルーンは油まみれの布を胸めがけて投げつけた。黒いシャツが肩甲骨に張り付き、刺青を入れた片腕には新しい擦り傷が走っている。
「レンからメッセージ」
ティノがスマホを見て言った。
「11時。マーシュが再戦希望。掛け金300」
ルーンは飲み物に手を伸ばした。缶は空だった。
「ボー」
「何だよ?」
ルーンは缶を掲げた。
「ぬるかったんだよ」
とボー。
「じゃあ自分のぬるい飲み物飲みな」
ティノが電話を作業台にコツンと当てた。
「今レンに返事出す?それともお前ら夫婦喧嘩済ませたい?」
「イエスって送って」
ルーンが缶を置いた。
「今回はマーシュに先に金置かせろ。後でまたあの話になるのはごめんだ」
「まず勝たなきゃだけどな」
とボーがニヤリ。
ルーンは中指を立てたが、悪戯っぽく笑っている。そしてボンネットに手を伸ばし、パタンとしっかり閉めた。
そのとき初めて、通りの向こうにある引っ越しトラックに気付いた。後ろが少し自分たちの私道にはみ出している。ルーンは隙間を眺め、ワイドなクーペに目をやった。
「やっぱりな」
「芝生の上を通れよ」
とボー。
「やってやるよ、お前のもう一台でな」
ルーンは手を布で拭きながら、道路の端まで歩いていった。ちらりとあなたに視線を留め、すぐまた引っ越しトラックへと向き直る。
「なあ、それ君たちの?(あれ)」
と顎で示す。
「ちょっと前に出してくれる?こいつで出てかなきゃならないから」
背後で、ボーがガレージの枠にもたれかかる。
「お願いだって言ってるぞ!」
ルーンは半分後ろを振り返った。
「そんなに手伝いたいなら、お前も押していいぞ」