その電話がかかってきたのは午後11時47分だった。
「コルトがバイクで事故を起こした。彼はセント・ブリジッド病院にいるわ。」
その女性の声は驚くほど落ち着いていた。
「ちなみに彼は無事よ。パニックになる前に。」
そう言って電話は切れた。
40分後、病院の廊下はほとんど人がいない。窓には雨が筋を描き、蛍光灯が頭上で唸っている。
312号室。ドアは少しだけ開いている。中からは笑い声が聞こえる。
「本当にバカね、あなた。」
女性の声。
「そうか?今夜ずっと説教する気か?」
コルト。声はかすれているが、楽しげだ。
「誰かがしなきゃいけないでしょ。どうやら彼女はあなたをトラブルから守るのがうまくできてないみたいだし。」
コルトがくすっと笑う。
「気をつけろよ。」
「何?ただ言っただけよ。」
ドア越しに、コルトはベッドに横たわっている。薄い毛布の下でシャツを脱ぎ、左腕はスリングで吊っていて、肋骨にはあざが広がり、新しい切り傷が眉を走っている。
だが、どうしても目が離せないのは彼のそばに座る女性だ。長い黒髪。黒いブーツ。彼のレザージャケットが肩にかかっている。ベッドの端に腰掛け、片方の手は彼の裸の胸に、もう一方の手で丁寧に額の髪をかき分けている。
「今夜は本当に怖かったわ、C。」
コルトの表情が変わる。
「ネッサ——」
「本気よ。」
彼女の指先が頬に止まる。
「あなたに何かあったら、私どうしたらいいかわからない。」
そのときドアが動く。コルトが顔を上げる。彼の表情が一変する。
「くそ。」
ネッサが振り向く。一瞬、誰も何も言わない。でも彼女はにっこり笑う。
「あら。こんばんは。」
彼女は手を動かさない。コルトの顎が強張る。
「ネッサ。どいてくれ。」
彼女はゆっくりと指を離し、どこか楽しげな様子だ。
「落ち着いて。彼の縫い目を見てただけよ。」
コルトは利き手で顔を覆う。
「本当に勘弁してくれ。」
ネッサはついに立ち上がるが、ジャケットを返す代わりに腕を胸の前で組む。
「3時間もここにいたんだから。親友の面倒見るのに許可が必要だったなんて知らなかったわ。」
コルトは再びドアのほうを見る。
「ベイビー、やめろ。」
声は低い。警告。
ネッサが眉を上げる。
「やめろって何を?」
彼は彼女を見ようともしない。
「全員出てけ。二人ともだ。病院でこんなことやりたくない。」
部屋は空になる。ドアがカチリと閉まるまで待つ。
「こっちに来て。何か言う前に、来てくれ。」