ホテルのカーテンの隙間から朝の日差しがテロの顔を直撃する。彼はうめき声をあげながら手探りで枕を探し——誰かに腕が当たったとたん、動きを止める。
温もりがある誰か。
間違いなく自分のベッドにいるはずのない誰か。
彼は目を開ける。
数秒間、テロは動かない。ただ隣で眠る女性を見つめている。昨晩の記憶が、まったく役に立たない断片で押し寄せる——彼女がテキーラグラス越しに彼を笑っていた。裸足でホテルの廊下を駆け抜けていた。彼女の手を握っていた。ネオンの光。誰かが歓声を上げていた。ラインストーンのスーツを着たそっくりさん。
……ラインストーンのスーツを着たそっくりさん?
彼はゆっくりと左手を持ち上げる。
結婚指輪がはまっている。
「嘘だろ」
彼は見つめる。
「嘘だ、嘘だ、嘘だろ」
彼の視線は、シーツの上に置かれた彼女の左手へ向かう。
おそろいの指輪。
「ふざけてるとしか思えない……」
彼は背中から枕に崩れ落ち、両手で顔を覆うと、頭が痛むのを即座に後悔する。3 秒だけそのままで横になり、再び彼女のほうへ顔を向ける。
彼女はまだ眠っている。
しかも都合の悪いことに、彼が昨晩どうしても離れられなかった相手だ。
彼の視線がしばらく彼女にとどまったとき、また断片的な記憶がよぎる——彼女が大量のネオンの下で彼を見上げ、何かを言って彼が飲み物をこぼしそうになるほど笑った瞬間。
その後の記憶は、何もない。
彼の隣で、ようやく彼女が動き始める。
彼は彼女がゆっくり目を開けるのを見届け、左手の指輪を2人の間に掲げて、信じがたいような歪んだ笑みを浮かべる。
「おはよう」
彼は彼女のぼんやりした視線が自分の指輪に向かうのを待つ。
「……まあ、どっちが焦るより先に公式に言っておくけど、いつ結婚したのか、俺には全っ然分からないから」
彼は彼女の指輪をちらりと見る。
間。
「でも、俺の趣味は結構いいらしい」
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あなたはゆっくりと目を開ける。眩しいベガスの日差し、頭を打つような痛み、そして見知らぬ誰かの隣で目覚めたというはっきりとした違和感。
隣に横たわる男を見る。
あ。
……まあ、見ていて飽きる顔ではない。
名前を思い出そうとする。
代わりに現れるのは一瞬の記憶——笑いながらホテルの廊下を駆け抜けるとき、彼があなたの手をつかむ。
消える。
また別の一瞬——大量のネオンの下で彼を見上げ、あなたの言葉で彼が頭を仰け反らせて笑う。
それからテキーラ。音楽。彼の手があなたの腰に。裸足で冷たい床を踏む感触。誰かの歓声。
ラインストーンのスーツを着たそっくりさん。
……なんでラインストーンのスーツのそっくりさん?
何か役立つ記憶を求めて一瞬目を閉じる。
何もない。
再び目を開けると、ハンサムな見知らぬ男性が左手を掲げている。
結婚指輪。
「……まあ、どっちがパニックになるより先に公式に言っておくけど、俺、いつ結婚したのか本当に全っ然分からないから」
眠気の中の可笑しさが消える。
自分の手を見下ろす。
おそろいの指輪。
見つめる。
一度。
二度。
そしてゆっくりと彼を見上げる。
「でも、私の趣味もなかなかだったみたい」
驚きの笑い声が思わずもれる。枕に頭を戻し、片手で目元を覆いながら、この現実離れした状況を実感する。
「うそでしょ」
指の隙間から彼を覗き見て、次に彼の指輪をわざと見る。
「……良いニュース。酔った私はあなたと同意見だったみたい」
手を下ろしながら、思わず口元がゆるむ。
「で、悪いニュースは?」
もう一度、彼の顔をじっと見つめる。魔法のように彼の名前が思い出せるのを待つ。
無理だった。
「あなたが誰か、まったく分かりません」