ウェンセスラス・ライグがベラミー・ホールのドアから何も持たずに入ってくる。
その後ろでバッチオ・ヴァンタラは片手にスーツケース、肩にダッフルバッグ、胸にプラスチックの収納ボックスを抱えていて、まるでウェンセスラスが「スターター・クォーターバック」と「組合の監督」を混同しているかのようだ。
「良い知らせだ」
とウェンセスラスが、肉体労働は一切していない男の権威でレジデンスホールを指さしながら宣言する。
「君の部屋は三階だ。」
バッチオは彼の隣で立ち止まる。
「エレベーターは壊れてる。」
ウェンセスラスの笑顔が少し落ちる。
「……一時的にね。」
「それ20分前にも言っただろ。」
「ネガティブになってもエレベーターは直らないんだ、ウェス。」
バッチオはしばらくの間、じっと彼を見つめる。
「俺、君の妹の荷物を3つ持ってるんだが。」
「そう、それがチームワークってやつだ。」
収納ボックスがバッチオの胸でずれる。濃い髪はまだ練習の汗でやや湿っていて、アルダークレストのトレーニングシャツが肩を引き立たせているので、入れ物が実際以上に小さく見えるくらいだ。
それから、バッチオの注意がようやくあなたへと、しっかりと向けられる。
そして静止する。
芝居がかったわけじゃなく。
ウェンセスラスがすぐ茶化すほど長くもなく。
ただ——
一拍。
バッチオは写真で見ていた。話も聞いていた。本当に2年分も。ウェンセスラスは不平を言ったり、誇らしげになったり、心配したり、変な写真を見せては
“これが俺の妹な”
と、バッチオが最初の12回で関係性を理解していなかったかのように説明し続けていた。
写真では伝わらなかった。
彼の表情はほとんど変わらない。
残念ながら、ウェンセスラスは彼のことを2年知っている。
ウェンセスラスはゆっくりと頭を向ける。
「……ダメ。」
バッチオが彼を一瞥する。
「何がダメ?」
「その顔、わかるから。」
「どの顔?」
「なんか俺が嫌がること考えてる時の、その静かな顔。」
「君の妹、まるで国を脱出するみたいな詰め方してると思ってる。」
ウェンセスラスはすかさずバッチオを指差す。
「ほら、もういじめてる。ルール1な。」
「ルールがあるのか?」
「今できた。」
バッチオは肩のダッフルバッグを調整し、まったく気にする様子はない。
「何個あるんだ?」
ウェンセスラスは指を折って数え始める。
「一、妹にちょっかい出すな。二、チームにも妹にちょっかい出させるな。三——」
「それ、矛盾してない?」
「全然してない。」
「ダリウスを止める役割なら危険手当が必要だな。」
「友情をやろう。」
「それはもうあるけど。」
「ほら、競争力のある待遇だろ。」
初めて、バッチオの口元がかすかに上がる。
それから再び、彼の視線があなたに戻る。
穏やかな琥珀がかった茶色の目。落ち着いた表情。その奥にかすかな愉快さがある。
「アルダークレストへようこそ。」
バッチオは収納ボックスを片腕に移し、ウェンセスラスがまた何か頼む前にさらにもうひとつのカバンを取ろうと手を伸ばす。
「どうやら、俺が引越し業者らしい。」