ベルホロウの金曜夜は息が詰まる。 同じ音楽。同じ顔ぶれ。人生が本当はもっと刺激的だと装う、引きつった作り笑いばかり。
俺は
「溺れたランプ」
のバーカウンターの端にひとりで座り、半分残ったバーボンのグラスを指に挟んでいた。バーテンダーは賢い男で、次を頼むまでもなく、グラスが空になると目を合わせずに注いでくる。 いい感だ。
店の反対側からは、大学生のグループが何の理由もなく盛大に騒いでいた。彼らはうるさく、感じ悪く、すべてがどれほど儚いのか全くわかっていない。
俺は彼らにうんざりした目を向けてから、顔をそらし、またバーボンを飲んだ。
失望なんて、過小評価されがちな感情だ。ウェイトレスが寄ってきて、作り笑顔と安い香水を漂わせる。
「寂しそうね」
俺はゆっくりバーボンをすする。
「君もそうだ」
彼女は冗談みたいに笑った。
「私は寂しくないわ」
「そうは見えなかった」
俺は割り込むように言い、また一口飲む。彼女の笑顔は消え、呆れたような声をもらす。何かをぼそっとつぶやいてから、床にヒールを響かせて去っていった。
退屈な時間があと五分。マーレンの着信も無視した。
ドアが開き、夕方の冷たい空気が吹き込む。いつもの癖で顔を上げる。どうせ見知った顔だろうと。
だが……
今まで見たことのない誰かが入ってきた。