夏休みが始まったばかり、あなたはついに大学から帰省した。
アンスガー——年上の義理の兄——は卒業してからずっと家のプールハウスで過ごしている。家族の誰もが彼は
「無職」
で
「模索中」
だと思っている……。
でも、彼がお金に困っている様子は一度も見たことがない。
今夜、母が料理の載った皿をあなたに手渡す。
「これ、オスウィックに持っていってくれる?夕飯にまだ来てないの。」
あなたは皿を持って裏庭を渡り、プールハウスのドアをノックする。 反応はない。 もう一度ノックする。 それでも無反応。 ドアは鍵が開いている。 あなたはそっと押し開ける。 部屋の中は、いくつものモニターとカラフルなLEDの光だけが灯っている。
姿が見えるよりも先に、オスウィックの声が聞こえる。 だけど何かがおかしい。
とても変だ。
何年も一緒にいるのに、 こんな喋り方は聞いたことがない。
彼はゲーミングチェアにもたれかかり、片手でコントローラーを適当に握ってマイクに向かって喋っている。普段の無感情でそっけない声が、今は滑らかで、遊び心にあふれ、自信に満ち溢れている。
「みんな、見たいんだろ?」
彼は笑う。ゆっくりと、意味ありげな微笑みを浮かべる。
「大胆になってきたな。」
チャットが高速で流れていく。
その声 SATINSINお前は悪魔だ もっと見せてくれよ!! 分かってやってるだろ ヤバい、やられる
アンスガーはカメラに顔を近づけ、手はだんだん下へ
「みんな本当にいやらしいな……」
声を落とし、秘密めいた口調になる。
「でも俺もなんだよな……欲しいもの、あげずにいられないんだよ……。」
さらにコメント。さらにハート。さらに有料登録。 やっとあなたは画面に目をやる。
SATINSIN — LIVE 視聴者 18,742人
胃が一瞬で冷たくなる。 その名前、知っている。 ネット中の誰もが知っている名前だ。
謎の、顔を明かさない超人気ストリーマー。あの声、あのタトゥー、あの挑発的な性格。贅沢な暮らし。 あなたはゆっくりモニターからオスウィックに視線を戻す。
無職の義理の兄。
彼はまだ視聴者と喋っている。手はパンツの中へと動き、あなたの気配に気づいたとき——
彼の視線が鋭くこっちを刺す。
一瞬だけ、その表情は純粋な驚き。 だがすぐに最悪の事態に気がつく。 あなたがカメラの映る範囲にいるのだ。
チャットが大騒ぎになる。
待ってあれ誰?? ルームメイト?? 誰か入ってきたぞ?? SATINSINどういうこと? 彼氏/彼女なの? 家にいるの? 誰なの?? 顔出し???
アンスガーはモニターを見る。 そしてあなた。 その手がキーボードに伸びる。
配信が突如終了する。
静寂。 モニターの光だけが顔を照らす。 そして——
Satinsinが消える。
笑顔も消え、 姿勢も変わり、 声の温度が一気に冷える。 急に、あなたが知っているオスウィックがそこに立っている。
冷たい。
何を考えているか読めない。
無関心。
数秒黙ってあなたを見つめると、やっと口を開く。
「ドア、閉めろ。」
あなたはためらう。 彼の目が細くなる。
「今すぐだ。」
背後でドアがカチリと閉まる。 アンスガーは椅子から立ち上がる。 再び声を落として話す。
「今のは見なかったことにしろ。」
間。 彼の視線が定まる。
「誰にも話すなよ。」
さらに沈黙。 彼は一歩前に出る——あなたには触れず、だが本気だと嫌でも分かる圧。
「これからどうするか、よく考えろ。」