ケイリス・ヴェイナーは、人をよく見ていた。
生き延びるうちに身についた、ありがたくない副作用だった。
スカーンホルト戦士学院では、誰かを見落とせば命を落としかねない。短剣のそばで止まったままの手。教官ではなく出口ばかり気にしている訓練生。失うものはもう何もないと腹をくくったせいで、殴られた肋骨の痛みを急に口にしなくなった一年生。
重要なのは、そういう細部だった。
ケイリスは三年かけて、それらを見ているそぶりも見せずに頭に収める術を身につけていた。
だからこそ、なぜあなたのことが目に入るようになったのか、自分でも説明がつかなかった。
危険だからではない。
少なくとも、彼はそう思っていなかった。
とりわけ騒がしいからでもない。
そして——
ほら。
あなただ。
また。
ケイリスの顎に力がこもった。
「また始めたな」
シラックスの声が頭の中に滑り込む。乾いた愉快さを含んでいて、聞いた瞬間に苛立ちを覚えた。
‘何をだ’
「見ている」
‘俺は翼守だ。見るのが仕事だろう’
間があった。
続いて、自分の竜が心底あきれ返っているのが、はっきりと伝わってきた。
「そうでしょうとも」
ケイリスは彼女を無視した。
彼は無視することにかけては、飛び抜けて上手かった。
人を。
問いを。
感情を。
とりわけ、感情を。
その技術を軸に、彼は人生をまるごと組み立ててきた。
スカーンホルトには、目を留めてもらいたくて必死な連中があふれていた。一年生は〈スピルウェイ〉を生き延びたあと、雨に濡れた石橋を渡りきっただけで不死身になったかのように中庭を闊歩する。二年生はもっと始末が悪い。本当に不死身かもしれないと思えるほど長く生き延びてしまったからだ。そして三年生は——
まあ。
三年生は、もっとよく分かっている。
ケイリスは間違いなく分かっていた。
彼は訓練場の端に腕を組んで立ち、隣で話すヴェニックの声をほとんど聞き流していた。
午後の日差しがウィング区画を囲む石壁に照りつけ、ケイリスの肩に張りついた黒い騎手用レザーを温めていた。どこか背後で鋼と鋼がぶつかり合う音がする。模擬戦のマットのあたりで、誰かが悪態をついた。
また一つ、体が地面に叩きつけられた。
強く。
誰も様子を見に足を止めなかった。
スカーンホルトだ。
彼の視線は、無意識に訓練場を走った。
第九ウィング。
第二小隊。
南側のマットには一年生たち。
スカーランド教官はちょうど一人の訓練生の構えを徹底的に崩しており、その横では別の二人が順番を待っていた。
「聞いてないだろ」
ヴェニックの声が、彼の注意を横へ引き戻した。
ケイリスは頭を動かさなかった。
「聞いている」
「じゃあ、今俺が何て言った?」
「無駄に長いことだ」
ヴェニックは彼をじっと見た。
ケイリスはようやく視線を向けた。
一番古い友人は、ケイリスが見ていた方向を目で追った。
それが間違いだった。
ヴェニックの眉が上がった瞬間、ケイリスはそれを悟った。
「違う」
ヴェニックの口元がぴくりと動いた。
「何も言ってないぞ」
「言いかけただろう」
「いや、言いかけてない」
「考えてはいた」
ヴェニックはゆっくりと笑みを広げた。
ケイリスの顔から表情が消えた。
「よせ」
ヴェニックは無実を装って両手を上げた。
「まさか、とんでもない」
ケイリスは訓練場へ注意を戻した。
すると、あなたがまっすぐこちらを見ていた。
くそ。
ケイリス・ヴェイナーに見ていたのを気づかれれば、大半の訓練生は目を逸らす。
それにはいくつか理由があった。
肌に絡みつく反乱の焼印がその一つ。
階級がもう一つ。
残りは、評判が説明してくれた。
トーヴィク・ヴェイナーの息子。
裏切り者の後継者。
焼印を負いながらどうにか生き延び、スカーンホルト屈指の強力な騎手にまでなった男。
人々はたいてい、どの噂が本当か確かめるほど視線を合わせ続ける価値はないと判断した。
あなたは違った。
訓練場越しに、あなたの目と彼の目が合った。
そして、そのまま離れなかった。
一秒。
二秒。
三秒。
ケイリスは、胸の内で何かが研ぎ澄まされるのを感じた。
惹かれたのではない。
その可能性は即座に切り捨てた。
好奇心だ。
その方が安全だった。
今度は、あからさまにあなたを観察した。
訓練でこめかみに汗がにじみ、呼吸はまだわずかに荒い。騎手用レザーには、今日すでに少なくとも一度はマットに投げ飛ばされた者の砂埃と汚れがついていた。
だが、あなたは彼に取り入ろうとしていなかった。
それが彼の癇に障った。
緊張した作り笑いもない。
急に服を整えることもない。
隣の訓練生にささやくこともない。
ただ、彼を見ていた。
見定めるように。
まるで、彼という人間を読み解こうとしているかのように。
ケイリスの眉がわずかに上がった。
あなたの顎が持ち上がった。
ほんの少し。
おもしろい。
「実におもしろい」
シラックスがつぶやいた。
‘口を出すな’
「お前は俺のことに、しょっちゅう首を突っ込むな」
「あなたは私と絆で結ばれているのよ」
「不本意ながらな」
ケイリスは、あやうく笑いそうになった。
あやうく、だ。
そこへスカーランド教官が訓練場の向こうからあなたの名を怒鳴り、あなたの注意はぱっとそちらへ逸れた。
ケイリスの肋骨の下で、思いがけず不快な何かがねじれた。
それも彼は無視した。
隣でヴェニックが小さな音を立てた。
ケイリスの視線が鋭く彼へ向く。
「何を言う気か知らんが」
彼は警告した。
「考え直せ」
「巡回任務の割り当てを終えたか聞こうとしただけだ」
「嘘が下手だな」
「お前に習ったんだ」
ケイリスは彼を睨んだ。
ヴェニックはにやりと笑った。
そのとき、二人ともそれを耳にした。
「もう一度!」
スカーランドの号令が訓練場に響き渡った。
ケイリスは、止める間もなくまた目を向けていた。
あなたは模擬戦のマットに上がった。
相手の方が大柄だった。
当然だ。
スカーンホルトには、流血沙汰になりそうな組み合わせを選んで対戦させるという、困った習慣があった。
向かいの訓練生は肩を回し、にやりと笑った。
ケイリスは即座にそいつが気に入らなくなった。
理屈に合わない。
それは分かっていた。
それでも気に入らなかった。
試合が始まった。
相手が突っ込んできた。
あなたは動いた。
後ろではない。
横へ。
いい。
ケイリスの注意が研ぎ澄まされた。
あなたの方が力が強いわけではない。
あなた自身、それを分かっていた。
力に力で応じようとはせず、相手が体重を預けきるのを待ってから、その腕の下をすり抜けた。
あなたの肘が相手の肋骨に入った。
相手がうめいた。
あなたは身を翻した。
相手の立て直しは、思ったより速かった。
拳があなたの肩を捉えた。
あなたはよろめいた。
ケイリスの腕がほどけた。
ヴェニックが横目で彼を見た。
ケイリスはまた腕を組んだ。
相手があなたを追ってきた。
攻め急ぎすぎだ。
雑だ。
あなたは一撃をかわし、もう一撃を防いだが、三発目は顎にもろに入った。
あなたの頭が横に弾かれた。
冷たい何かがケイリスの中を走り抜けた。
ブーツの周りで燃えさしが揺らめいた。
ヴェニックが視線を落とした。
それからゆっくりと、彼の顔へ戻した。
「おもしろいな」
ケイリスは即座に燃えさしを引っ込めた。
「黙れ」
「何も言ってないぞ」
「今まさに言っただろう」
マットの上で、あなたは血を土に吐き捨てた。
そして、笑った。
ケイリスは見つめた。
相手がためらった。
それが彼の過ちだった。
あなたは相手の足を払った。
相手はマットに倒れた。
立て直される前に、あなたは膝を相手の胸に落とし、短剣を顎の下に押し当てた。
静寂。
そこでスカーランドが叫んだ。
「降伏しろ」
下敷きの訓練生が悪態をついた。
短剣がさらに近づく。
「降伏して」
あなたは繰り返した。
相手はあなたを睨みつけた。
それから、マットを叩いた。
あなたは立ち上がった。
勝ち誇ることもない。
観衆へ得意げな視線を送ることもない。
あなたはただ、口の端の血を手の甲で拭い、空いたほうの手を相手に差し出した。
相手はその手を見つめた。
そして、握った。
ケイリスは完全に動きを止めた。
それだ。
あれだ。
彼が気づいていたのは、あれだったのだ。
容姿ではない。
身のこなしでもない。
ケイリス・ヴェイナーを見据えることを、まったく理にかなった行為だと決めてかかっているらしい点ですらない。
あれなのだ。
あなたには、人の喉に刃を当てるだけの冷酷さがあった。
そして、その後で助け起こすだけの人間らしさもあった。
スカーンホルトで、その二つが共に生き残ることはめったにない。
いずれ学院が、どちらか一方をあなたから叩き出す。
両方のこともある。
ケイリスは、それを誰よりもよく知っていた。
あなたはマットを降りた。
スカーランドが次の組を呼んだ。
訓練場はいつもの調子を取り戻した。
だがあなたは小隊に戻らず、水樽のほうへ歩いていった。
彼のほうへ。
ケイリスはその場から動かなかった。
ヴェニックが二人を交互に見た。
「おっと、こりゃ面白くなるぞ」
「消えろ」
「自分の区画に立ってるだけだが」
「ヴェニック」
「分かったよ」
あの野郎は、実際には立ち去らなかった。
数歩分離れただけだった。
ケイリスは後で始末をつけるつもりだった。
あなたは水樽にたどり着き、柄杓をつかんだ。
ケイリスは、あなたが水を飲むのを見ていた。
見られているのは、あなたにも明らかに分かっていた。
あなたの肩がわずかに動いた。
それから柄杓を下ろした。
「そんな恐ろしい評判のわりに、ずいぶんじろじろ見てくるんだね」
背後のどこかで、ヴェニックがむせた。
ケイリスはゆっくりと首を回した。
あなたはまた彼を見ていた。
今度は、近くで。
顎のあたりには、もう痣が浮き始めていた。
「俺の癖を気にするわりに、ずいぶん顔を殴られているな」
あなたの口元が動いた。
「職業上の危険ってやつ」
「殴られることがか?」
「面白い人間でいること」
今のは、危うく決まるところだった。
ケイリスの口の端が動きかけた。
彼はそれを押さえ込んだ。
あなたの視線が一瞬、騎手用レザーの襟の下へ消えていく反乱の焼印に落ち、また彼の顔へ戻った。
嫌悪ではない。
恐怖でもない。
ただの好奇心だった。
なぜかそれが、いちばん厄介だった。
ケイリスは首をかしげた。
「お前は、相当の勇者か、並外れた馬鹿のどちらかだ」
「その二つは、両立するよ」
「ああ」
彼は静かに言った。
「スカーンホルトでは、たいてい区別がつかない」
初めて、あなたの表情の何かが変わった。
恐怖ではない。
理解だった。
あなたは模擬戦のマットに目をやった。
「どっちなのか、そのうち分かるでしょ」
ケイリスはもうしばらくあなたを見ていた。
それから視線が、あなたの顎に浮かぶ痣へ落ちた。
「左肩が落ちる」
あなたはまばたきした。
「え?」
「打つ前にだ」
彼はマットのほうへ顎をしゃくった。
「右の拳を出そうとするたびに、左肩が落ちる」
あなたの表情が変わった。
今度は、あなたのほうが彼を観察していた。
「試合を最初から最後まで見てたの?」
しまった。
ケイリスの顔は何も表さなかった。
「俺は誰でも見る」
背後で、ヴェニックがわざとらしく咳をした。
ケイリスは殺意を検討した。
あなたはヴェニックに目をやった。
それから、またケイリスへ。
「なるほどね」
その一言には、面白がる気配があまりに多く含まれていた。
ケイリスは一歩近づいた。
脅すほどではない。
誰と話しているのかを思い出させるには、十分な距離だった。
たいていの者は、本能的に後ずさる。
あなたは違った。
彼はあなたへ視線を落とした。
「肩を直せ」
彼は静かに言った。
「あいつより腕の立つ奴なら気づく」
あなたの面白がる気配が消えた。
彼が本当は何を渡してくれたのか、あなたは理解した。
批判ではない。
警告だ。
弱点だ。
騎手の命を奪う類の、弱点だ。
あなたは一度うなずいた。
「直すよ」
ケイリスはもう一秒、あなたの視線を受け止めていた。
それから、離れた。
本来なら、それで終わりのはずだった。
巡回の予定が待っている。
気にかけるべき武器の輸送もある。
四つのウィングに散らばる、焼印を負った者たち。
スカーンホルトに存在を悟られてはならない、革命。
顎に痣をこしらえ、腹立たしいほど怯えない騎手一人よりも重要な問題が、ざっと千はあった。
彼は三歩だけ進んだ。
「ヴェイナー」
ケイリスは足を止めた。
こんなふうに彼を呼び止める者は、ほとんどいない。
彼は肩越しに振り返った。
あなたはまだ水樽のそばにいた。
「何だ」
小さな笑みが浮かんだ。
「やっぱり、よく見るよね」
それからあなたは背を向け、小隊のほうへ戻っていった。
ケイリスは、あなたの背を見つめた。
隣にヴェニックが現れた。
しばらく、どちらも口を開かなかった。
やがてヴェニックが、ごく静かに言った。
「これは見ものになりそうだ」
ケイリスの燃えさしが、ブーツの周りで渦を巻いた。
「一言も言うな」
「まさか、とんでもない」
「私、この子は気に入ったわ」
シラックスが宣言した。
ケイリスは短く目を閉じた。
最高だ。
どうやら彼の竜も、あなたに気づいていたらしい。
そして、それが厄介の種になる気がしてならなかった。