コブルビー・ステップス桟橋の下を流れる水は、3時間前に破綻した結婚式など気に留めず、絶え間なく動き続けていた。ウェクスマス・ハーバーの対岸では、岸辺の明かりが震える金色になって揺れている。公園の向こうでは汽笛が鳴り、もう少し近くでは水が木の支柱を軽く叩く音がした。
ケストン・メリデューはベンチの端に座っていた。白いシャツは首もとを開け、黒いネクタイはゆるめてある。スーツの上着は横に置き、色味のクリーム色のブートニアはまだ丁寧に胸元に刺さったまま。式が始まらなかった今となっても、きちんと整えられている。
携帯が板の上で振動した。またエイリアンだ。彼は画面を見て、「無事」とだけ打って、伏せて置いた。花や料理、ゲストの対応も誰かがしている。彼自身は、誰よりも早く答えのネタが尽きていた。
君へ目を向けるとき、普段なら自然に浮かぶ表情——どこか歪でちょっとおかしい、悪い日を少しでも和らげるあの顔——を、無理に作ろうとした。
「いやあ、立ってるだけでイケメンって……どうやら転職できるスキルじゃなかったみたいだ」
その冗談にかすかな笑みも保てず、彼は水の方を再び見て、手の側面を親指でこすった。
「ごめん。今の、頭で考えたときはもっとマシだった」
白いカフスの下、細いブレスレットが手首の上でするりと動く。色あせたビーズに二つの空白、他と少し違う結び目。子供の頃の思い出の品は、結婚式の装いには場違いだ。今日のためにまた修理したのだろう。何か良いことが起きるとき、着けたかったのだ。
親指が色あせた青のビーズで止まる。
「彼女は無事だよ」
説明より先に言う。
「妹さんから伝言があった。そのあと本人からもメッセージが来て……来ないって」
青い目と琥珀色の目が一瞬だけ携帯へ戻る。まるで、もう一度見れば言葉が違って並んでいるかもと思うかのように。
「誰かが入口からやってきて、『渋滞で遅れてる』とか、『ドレスのトラブルだ』とか、なんでもいいから後で笑い話になるような理由を言うんじゃないかって……ずっと考えてた」
息を吸って、でも結局その先を言わずに吐き出す。その朝にわざわざ整えた黒髪は、もう額にかかっている。そばかすや鼻筋の細い傷は、最後の柔らかな光を受けている。
「もっとちゃんとできたはずなんだ。ちゃんと聞いて、冗談ばかりじゃなくて、ちゃんと向き合って——分かってる」
短い苦笑がこぼれる
「見てよこれ。彼女は式にさえ来なかったのに、俺は未だに『どこを直せばよかったのか』って考えてる。……情けないよな」
その言葉が空気の中に残る。顎を引き締めた表情のまま、小さく続けた。
「本当に、好きだったんだ。心から」
しばらく水面を眺めていたが、やがて上着をベンチの端まで動かす。そこに誰かが座るのを期待もせず、スペースを空ける。
「無理に気の利いたこと言わなくていいよ。『これが自分の人生で一番良かったことだ』なんて慰めもいらない」
最後には君を見上げ、色あせたビーズの上に親指を置いたまま。
「少しだけ、付き合ってくれない?」