ジェマが長い砂利道に車を乗り入れた瞬間、音楽の音量をさらに上げた。
「来たわね!」
フロントガラス越しに見えたのは、大きくて美しい湖畔の別荘。すぐそばにきらめく青い水。桟橋が家の裏手へと伸び、ボートにはすでに二台のジェットスキーが並んでいる。
ジェマが興奮気味にハンドルを叩くのに、あなたは笑ってしまう。
「三ヶ月よ」
彼女は言った。
「教授もいない。試験もない。何の責任もない。クソみたいな学生寮生活もない」
「バイトも」
「八月の話はまだしないで」
ジェマは車を停めてすぐに飛び降りた。
あなたも後に続き、別荘を見上げる。
「ちょっと、ここってそんな感じだって言ってなかったんだけど」
「でしょ?」
ジェマは頭の上のサングラスを引き抜いた。
「ほんと、派手すぎるくらい」
どちらも荷物を取る前に、中から何かが大きな音を立てて崩れる音がした。
そして——
「てめえ!バカ野郎!」
ジェマが凍りつく。
あなたは彼女を見る。
彼女はゆっくり目を閉じる。
「もう私の幸せは終わった」
開いた窓から別の声が聞こえてくる。
「元から壊れてたんだって!」
「お前が触るまでは壊れてなかったの!」
ジェマは荷物を放り出して家に向かって歩き出す。
「マジで、もしもうなんか壊してたら——」
あなたも中に続く。
声のする方、湖を見渡せる大きなオープンキッチンへと向かう。
三人の男たちがアイランドキッチンの周りに立っている。
そして——
ああ。
ジェマが兄と友達がここにいることは言っていた。
けど、決定的な情報がいくつか抜けていた。
たぶん、三人ともあんなにイケてる見た目だってこと。
デラノはカウンターの脇に、くたびれたTシャツとショートパンツ姿で立っている。やや乱れた濃い茶色の髪、日焼けした腕を胸の前で組み、鮮やかな青い目はまず妹の方へ。
次にあなたの方に。
一瞬、視線がとどまり、それからまたジェマに戻った。
「やっと来たか」
ジェマはバッグをカウンターに放り出す。
「うちらはさ、二十代中ずっと何回脳震盪をやればいいかって感じの生活より、ちゃんと大学行ってたんだけど」
金髪でアイランドにもたれかかる男がニヤリと笑った。
ペイトン。
「でもさ」
彼は言った。
「オレらの方が頭いいよな」
「お前、ゴルフカートで小川を飛び越えようとしたでしょ」
ペイトンは三人目の男を指さす。
「ローパーが“行ける”って言ったからさ」
ローパーはカウンタースツールに座り、タトゥーの入った腕をカウンターに置き、黒髪が少し額にかかっている。
その茶色の目は真剣そのもの。
「行けないって言った」
ペイトンは眉をひそめた。
ローパーはビールを一口。
「全然違う文章だ」
思わず、あなたは吹き出してしまった。
三人ともあなたに目を向ける。
ローパーの口元がわずかに動く。
デラノはあなたとジェマを交互に見る。
「こいつがその友達?」
「この子がその友達」
ジェマが言う。
「だから、みんなお行儀よくしなさい」
デラノはあきれ顔。
「まだ三十秒しかいないんだけど」
「だからこそ、先手打つの」
ペイトンはじろじろと恥ずかしげもなくあなたを見る。
「賢い選択だ」
ジェマは彼を指さす。
「やめて」
「何もしてないって」
「今しようとしたでしょ」
「そんなことない」
「小学校三年から知ってるんだよ」
ペイトンは少し考えて。
「それは……確かに」
デラノはカウンターから体を離して、玄関の方へと顎をしゃくる。
「また荷物めちゃくちゃ持ってきたの?」
「自分の物があるだけ」
「去年の夏、靴十一足持ってきてたよな」
ジェマは彼を睨む。
「船なんて持ってるくせに、全然運転できないじゃん」
「船ぐらい運転できるわ」
ローパーはあなたを見て言う。
「いや、できない」
「ふざけんなよ、ローパー」
「な。これだよ」
ジェマは彼らを指さす。
「これが今の同居人達よ」
あなたは微笑む。
「もっとひどいルームメイトと住んだことある」
デラノが片眉を上げる。
ペイトンは姿勢を正した。
ローパーは二人を見てから、小さくつぶやく。
「もう火をつけちゃったな」
「まだ二分しかいないのに……」
ジェマはうめく。
デラノは薄く微笑む。
「一週間もしたら、その発言を後悔するかもな」
「今夜かもね」
ローパーが続ける。
ジェマはあなたの腕を取る。
「いいから、荷物置く前に部屋見に行こう。これ以上奴らの競り合い見たくないし」
「もうやったよ!」
ペイトンが後ろから叫ぶ。
デラノはペイトンを押す。
「ちょっと、いい加減にしろ」
「え?オレたち海兵だぜ?ヒマだったし」
ジェマはそのまま歩き続ける。
「全員大嫌い」
ペイトンは笑ってあなたに呼びかける。
「ねぇ、大学生ちゃーん」
あなたは振り返った。
ペイトンはもう一度アイランドにもたれかかり、乱れた金髪が額にかかり、緑の目はあなたをしっかり捉えている。
ゆっくりと笑みが広がる。
「水着は一番上に入れといてね」
あなたは片眉を上げる。
「なぜ?」
ペイトンはビールを手に取る。
「今夜、湖に連れてくから」
ジェマはため息をついた。
「ここからが本番だね……」
ペイトンはウィンクする。
「最高の夏にしてやるよ、約束する」