友人がしつこく誘ってくるので、あなたはホロウタイドのライブに来ただけだった。
バンドのことはほとんど知らない。
でも彼女は、今夜を何ヶ月も楽しみにしていた。
ギタリストがステージに現れた時には、すでにアリーナ中が叫んでいた。
サビアン・ヴォードレイユ。
乱れた暗赤色の髪。黒い衣装。銀のアクセサリー。ギターは腰の低い位置に下げられている。
彼は明らかに厄介な存在だ。
そして彼が観客に笑いかける。
友人があなたの腕をつかむ。
「ほら、あれが彼。」
「そのセリフ、もう六回目だよ。」
「だって見てよ、あの人。」
照明が爆発する。
最初のギターリフがアリーナ中に響き渡る。
観客は大興奮だ。
その後の1時間は、点滅するライト、耳をつんざく音楽、熱気、そして何千人もの体がピットで押し合うだけだった。
あなたの腕を友人がつかむまで——。
「待って。」
あなたは彼女の方を見る。
彼女の顔が青ざめている。
「ちょっと具合が悪い。」
あなたの表情が一気に変わる。
「倒れそう?」
「わからない。本当に暑い。」
あなたは辺りを見渡す。
人が多すぎる。
「ここで待ってて。救護員を呼んでくる。」
あなたは人混みをかき分け、セキュリティに声をかけ続け、やっとスタッフ用入口を指し示される。
数分後、あなたはバックステージに立っていた。
黒いスタッフジャケットを着た女性が近づいてくる。
「ピットに友だち?」
あなたはうなずく。
「彼女に医療処置が必要なんです。」
女性はしばらくあなたを観察する。
そして彼女はファイルから何かを取り出す。
「通す前に、これにサインしてもらう必要があります。」
彼女はクリップボードを手渡してくる。
あなたが下を見ると——。
秘密保持契約書。
あなたは眉をひそめる。
「なんでNDAが必要なんですか?」
「手順です。」
「救護員を呼ぶだけなのに?」
少し間。
「……そうです。」
この時、逃げるべきだった。
でも友人が心配で、あなたはサインしてしまう。
女性はクリップボードを受け取る。
「ありがとうございます。」
彼女は黒いドアを開ける。
「こちらへどうぞ。」
あなたはためらう。
「救護室に行くんじゃ…?」
「ご案内しています。」
彼女はあなたを長い廊下へ導く。
警備員の横を通り、
楽屋の前を通り、
バンドのプロモーションで見覚えのある名前が書かれたドアをいくつも通り過ぎる。
会場からの音楽は遠くなる。
ついに、彼女が別の扉を開ける。
あなたは中に入る。
友人はいない。
救護員もいない。
代わりに、サビアン・ヴォードレイユが革のソファの端に座っている。
ステージ衣装のままだ。
ギターは壁にもたれかけている。
パフォーマンスで髪が湿っている。
そして、彼の目線はすぐにあなたを捉える。
サビアンはスタッフの方を見る。
「これは?」
「新しい契約。」
サビアンの眉が上がる。
そして視線は再びあなたへ。
「サインしたのか?」
「ええ、しました。」
彼がほほえむ。
ステージでの魅力的な微笑みではない。
もっと鋭い何か。
あなたは2人を見比べる。
「私、何にサインしたんですか?」
誰も答えない。
サビアンが立ち上がる。
あなたの方へ歩いてくる。
「リラックスして、可愛い子。」
彼の目が一瞬あなたの喉元に向く。
そして再び目が合う。
「君は何も悪くない。」
十分近づかれ、あなたは奇妙なことに気づく。
彼は息をしていない。
彼の笑みがさらに広がる。
二本の鋭い牙が現れる。
「実は……」
彼は首を傾げる。
「……君は今夜のディナーさ。」
あなたの表情を見て、彼は小さく笑った。
「そんなに怖がらないで。」
彼は自分の下唇の下を指でなぞる。
「その怖がる匂い、余計に美味しそうになるから。」