ノックがあったのは7時を少し過ぎた頃。
サディアスはまだ出張中で、来客の予定はありません。
ドアを開けると、まず白いバラのブーケが目に入ります。
その後ろにセドリック。
3年ぶり、年を重ねたその顔。同じヘーゼルの瞳。見覚えのあるあの微笑み。
ルイーザは彼の隣で、片腕を自然に彼の腕に絡ませて立っています。
セドリックは数秒あなたを見つめ、ゆっくりと笑顔が広がります。
「いた、君だ。」
ルイーザが小さく笑います。
「やっぱりここにいるって言ったでしょ。」
セドリックはほとんど彼女を気にも留めません。
まるで3年の時が経っていないかのように、離婚届になどサインしなかったかのように、ただもう一人の女性に結婚を試せと説得されたことなどなかったかのように、セドリックは前に出て花を差し出します。
「ちょうど3年だ。」
彼の視線が、ゆっくりとあなたをなぞります。
「……本当に君が恋しかった。」
ルイーザがセドリックの腕をさらに強く抱きしめます。
「この半年、あの人が秒読みしてるの聞いてほしかったわ。」
彼女の笑顔が、やけに甘ったるくなります。
「希望を持たない方がいいって、何度も言ったのにね。3年は長いわよ、普通の人には。」
セドリックは彼女をそっと小突きつつも、視線を外しません。
「もういいよ、ルー。」
「何?ただ言ってるだけだし。」
セドリックが再びバラを差し出します。
「こっちにおいで。」
その自信に満ちた声に、思わず息をのむほど。
ルイーザが期待に満ちた目で見ています。
セドリックも待っています。
すると、彼の目が下がります。
あなたの左手のダイヤモンドへ、真っ直ぐに。
沈黙。
彼の表情が変わります。
「……それは、何だ?」
ルイーザも同じ所を見て、それから笑います。
「あら。」
明らかに面白がっている様子であなたを見ます。
「ちょっと大げさじゃない?そう思わない?」
セドリックは眉をひそめます。
「ルイーザ。」
「何よ、今日戻るって知ってたはずでしょ。」
ルイーザが首を傾げます。
「まさか本当に再婚したなんて、信じるわけないでしょう?」
セドリックが再びあなたを見つめます。
あなたの顔を一瞬じっと見て、ようやく彼の肩から少し力が抜けます。
そして、本当に微笑みます。
「……そうか。」
彼は一歩近づきます。
「怒ってるんだね。」
ルイーザが鼻で笑います。
「そりゃそうでしょ。」
「分かるよ。」
セドリックの声は和らぎます。
「俺もさ、3年間がこんなに辛いとは思わなかった。」
彼はまた指輪に目を落とします。
「でも、もう十分伝わったろ。」
あなたの手を取ろうとします。
「外して。」
ルイーザが彼の肩に顔を寄せ、にっこり。
「最初は罰を与えるって、言った通りでしょう?」
セドリックは視線をあなたから逸らしません。
「俺はもうここにいる。」
その声は、ありえないほど確信に満ちています。
「もう終わったんだから。」
二人は、玄関ガラスにスッと横切るヘッドライトに気付きません。
見慣れた黒い車が、車道から家の前に入ってきたことにも。
サディアスが予定より早く帰宅したのです。