すべては一本の短いクリップから始まる。
エモリー・ダックスはジム帰りの車の中、片腕をハンドルにかけて座っている。明るい茶色の髪はトレーニングの名残でまだ少し乱れている。
カメラはすでに回っている。
「最近この議論、どこでも見かけるんだけどさ。」
彼の緑色の目が画面に向けられる。
「“毎日トレーニングする必要はない、ちゃんと人生も楽しめ”って、みんな言ってるよね。」
カメラに無表情を向ける。
「オレには人生あるよ。」
間。
「ただ、君たちより良いってだけ。」
にやりと笑う。
「オレは鍛える。プレイする。働く。気が向いたら遊びに行く。それでもまだ、ジムで2時間過ごすってだけで“個性がない”とか思われるんだよね。」
肩をすくめる。
「多分、規律を楽しめる人間もいるんだよ。」
動画は終わる。
あなたはコメントを書く。
あなた:
「男って本当に、2時間も筋トレして同じ上腕二頭筋の写真を14枚撮って、セクシーな写真をアップして、それを“規律”だなんて言うけど、女の子からの注目がワークアウトの半分なんじゃない?」
コメントが大反響を呼ぶ。
何千ものいいね。
みんながIRONVEILをタグ付けし始める。
そのうち、彼が見つける。
1時間後、あなたに通知が届く。
📱 IRONVEILが返信動画を投稿しました。
また車の中。
今度はカメラを真っ直ぐ見ている。
「なるほどね。」
ゆっくりとした余裕の笑み。
「まずさ、オレのジムでの行動、よく知ってるみたいだね。」
片眉を上げる。
「それからもしオレが女の子の注目を欲しがってるなら、信じてくれ…」
自分の体を見下ろす。
「そんなに苦労しなくても手に入るって。」
コメント欄は即座に大盛り上がり。
💬 neonvoid: あいつ本当に耐えられん 😭
💬 redflag.exe: 彼女がエゴを突いたら速攻で反撃したぞ
💬 pixelgremlin:
「そんなに苦労しない」
マジかよBRO????
💬 ctrlaltbae: これもうジムの話じゃなくなってるでしょ
エモリー・ダックスがあなたのコメントをもう一度読む。
「14枚の写真?」
笑う。
「数えたの?」
カメラにさらに近付く。
「だいぶ見てるね?」
クリップ終了。
あなたも黙ってはいられない。
返信を投稿する。
あなた:
「勘違いしないで。女って細かいことに気付くの。当然、それを欲しいとは限らないけど。」
コメントがバズる。
そして今度は、エモリー・ダックスがすぐには返事をしない。
数時間後、また動画が上がる。
無言。
キャプションもなし。
ただジムにいる彼。
バーベルをセットする。
カメラは全てを映す――コントロールされた動き、広い肩、ジムの強い光の下で輝くゴールドの肌、1回ごとに引き締まる筋肉。
セットが終わる。
ウェイトをラックに戻す。
そしてカメラをまっすぐ見る。
あの得意げな笑顔が戻る。
動画の上にテキストが現れる:
「勘違いしないで。」
**
間。
「そうだね。」
**
動画終了。
コメント欄は完全に大混乱。
💬 neonvoid: 彼女に反論するためだけにセクシー動画作ったwww 😭
💬 redflag.exe: こいつ絶対容疑晴れないタイプだ
💬 pixelgremlin: 腹筋で論破とかwww
💬 no_scope_nora: 2人とも正気の沙汰じゃない
💬 ctrlaltbae: 誰かそいつのスマホ取り上げて
すると携帯が震える。
📱 IRONVEIL
IRONVEIL:
君、本当にオレ嫌いなんだな?
2通目のメッセージ。
IRONVEIL:
でも、そんなにオレの話するの面白いよな?
それ以上話す前に、また通知が。
📩 イベント招待
ヴァンティアeスポーツ招待大会
VIPゲストご招待
あなたは近く開催されるプロeスポーツ大会に招待された。
承諾。
特に気にせず。
大会当日まで。
会場は超満員。
巨大なステージにライトが踊る。数千人の観客で埋まり、コメンテーターたちが歓声を背景に話している。
あなたはVIP席に座る。
照明が落ちる。
大歓声。
ステージ上方の巨大スクリーンが点滅。
IRONVEIL
彼のプロ選手プロフィールが画面いっぱいに映し出される。
エモリー・ダックス。
ゲーミングチェアに座っているわけでも、
短いクリップを作っているわけでも、
コメント欄であなたと口論しているわけでもない。
プロeスポーツのステージに、チームのジャージと首にヘッドセット、仲間たちと共に歩み出ている。
会場のボルテージはさらに上がる。
彼はまるで別人みたいに見える。
研ぎ澄まされて、
真剣な表情。
そして観客席を見渡していた彼の緑色の目が、突然動きを止める。
あなたに向けて。
一瞬、じっと見つめる。
顔に認識の色が走る。
やがて、見慣れたにやりとした笑みがゆっくり戻る。
カメラクルーの方を見る。
再びあなたに視線を戻す。
そしてあなたには聞こえない声で何か口パクする。
「本気で。」