家は写真通りだった。
人里離れていて、モダン。高級だがやりすぎてはいない。誰からも完全に解放され、静かな数日間を過ごせるタイプの場所だった。
予備の鍵は、メッセージにあった通り裏口横のロックボックスの中にきちんとしまってあった。暗証番号も合っていた。住所も確認メールと一致していた。中に入る瞬間まで、何もおかしいことはなかった。
最初は。
荷物を運び入れ、バッグを階段のそばに置き、持ってきた食料品を片付け始める。
その時、家が……奇妙に思え始めた。
パソコンが多すぎる。
次の部屋の一角には、机の上にいくつものモニターが配され、コードがきちんと後ろにまとめられている一式のセットアップ。キッチン近くのセキュリティパネルには、敷地内のカメラ映像が数台分映っていた。
そしてダイニングテーブルには閉じられたノートパソコン。
横には飲みかけのコーヒーのマグカップ。
前のゲストが流し忘れたような古いカピカピのマグではない。中にはまだコーヒーが入っており、カップの下の淡い跡が最近置かれたものだと示唆している。
どうやら、この家を管理しているやつはゲストの受け入れがまるでなっていないらしい。
それでも、自分には鍵がある。予約確認もある。料金も払っている。
だから、食料品を冷蔵庫に入れる。持ち物が家のあちこちに仮の居場所を見つけていく。そしてしばらくすれば、妙なテクノロジーも気にならなくなってきた。
ほぼ1時間後、窓に車のヘッドライトがスッと横切る。
私道をエンジン音が近づき、外で静かになった。
数秒の後、玄関のドアが開く。
三人の男が入ってきた。
三人ともダークな服を着こみ、顔には黒いバラクラバ(目出し帽)がまだ残っている。
最初に入ってきたのはジャーヴィス・コンリー。広い肩でほぼドア枠を埋めながら、無意識にすぐ後ろの鍵に手をかける。続いたのはサットン・ヨーク。ポケットからスマホを引き出す動作からして、今まで何か任務帰りだったことが窺える。
ラフェ・キャロウェイは最後に入ってきた。
ジャーヴィスは手袋を途中まで脱ぎかけて、階段近くの見覚えのないバッグに目をとめた。
彼は動きを止める。
サットンは危うく後ろからぶつかりかける。
二人ともキッチンの方を見る。
食料品の方へ。
そして、あなたの方へ。
沈黙が数秒間、重く流れる。
サットンは部屋全体にさっと目を走らせ、家の中に誰かがしばらくいた痕跡を鋭く拾った。ジャーヴィスは微動だにしない。ただ姿勢だけが変わり、体がビシッと緊張し警戒に満ちる。
ラフェはあなたを見る。
食料品へ目をやる。
そしてまたあなたを見る。
警戒ではなく、限りなく危険に近い興味の色がその顔を横切る。
「やめなよ」
ジャーヴィスがゆっくりとラフェへ顔を向ける。その表情を既に知っていて、その意味を気に入らないらしい。
ラフェはまだ何もしていない。
目の端が少し細くなる。
「何だ?」
サットンはセキュリティパネルのほうへ移動、指でパネルを操作しながらカメラ映像をちらちらと見比べている。
「家に見知らぬヤツがいるんだぞ、ラフェ」
それが逆にラフェの楽しみを大きくしたようだった。
彼は中へ一歩進み、手袋を何気なく外しながら再びあなたの方に注意を向ける。持ち込んだ荷物をさっと見て、無防備にカウンターに置かれた予備の鍵に視線を止める。
その鍵を二本の指で持ち上げる。
ユーモアの影はまだ目に残っているが、今やその奥に分析的なものが潜んでいる。
「どうやら鍵を持った知らん奴がいるみたいだな」
ジャーヴィスがぼそっと何か呟く。
サットンはよりあからさまだ。鍵を見て、さらに画面に目をやり、その存在自体に憤慨したようだ。
「誰も鍵なんか持ってないはずだ」
ラフェは指の間で一度鍵を回し、あなたを再び見る。
「彼女は“それが間違いだ”って証明しようとかなり本気みたいだけど」
あなたの方へ歩み寄る。
慌てる気配は全くない。いきなりの糾弾も、大声もない。むしろ一歩進むごとにラフェは余計に面白がっているように見える。
だがその目は鋭い。
食料品。あなたの持ち物。鍵。部屋。そしてあなた自身。
すべて。
どんな言い訳を出そうとしても、口に出す暇は与えられなかった。
ラフェはあなたのもとまで来て、手首をしっかりとつかみ、滑らかな動作で廊下のほうへ向きを変える。
ついにサットンもセキュリティ映像から目を離す。
「どこへ彼女を連れていく気だ?」
ラフェは振り返りざま、まるで無頓着に言う。
「どうして今うちの家に“ゲスト”がいるのか、その理由を聞きにいく」
ジャーヴィスは腕を組み、バラクラバ越しでも不満がありありと伝わる。
「気に入る前にちゃんと尋問しろよ」
ラフェは歩みをとめる。
一秒だけジャーヴィスを見る。
そしてあなたを見る。
またあれだ。
あのちっぽけな好奇心の火花。
「約束はしない」
廊下の奥へ進んでいく。
選ばれた部屋は狭く、必要最低限の設備だけ。机、椅子が二つ、そしてまたパソコン。ラフェはドアを開け、あなたを中に導き、ようやく手首を離す。
ドアが閉まる。
この時になってはじめて、彼の姿勢にあった余裕のユーモアが変化した。
消えたのではなく——
変わった。
ラフェはデスクの椅子には座らない。代わりに机の縁に体重をあずけ、腕を組み、黙ってあなたを見つめる。
その目は今やかなり集中し、
鋭さを帯びていた。
“誰かから答えを引き出すためだけに部屋へ連れてきた”経験が見て取れる集中力だった。
しばらくして、彼は少しだけ首をかしげる。
「座れ」
あなたの服装にさっと目をやり、顔に視線を戻して、口元にかすかな笑みを浮かべる。
「それじゃ——誰なのか、どうやってその鍵を手にしたのか、で、なぜ俺が帰宅して冷蔵庫に荷物を詰める君を見たのか、教えてもらうぞ」
一瞬だけ沈黙。何か考えているようだ。
そしてドアのほうに視線を走らせ、
再び口元に笑みが返る。
「セキュリティ違反うんぬんの退屈な話に入る前に——」
今度は完全にあなたに注意を向け、目が楽しそうに輝く。
「何かおいしいもの、買ってきたって言ってくれよ」