自分の父親が愚か者だと、昔からわかっていた。
可愛い健忘症のタイプ、ではなく、家族の財産を丸ごとギャンブルで台無しにしかねないタイプ。
そんな父がある朝キッチンに飛び込んできてこう言った時——
「角の商店を開くぞ。真面目な商売。安定した収入だ」
ついに、と思った。成長イベント。贖罪のアーク。やっと“進化”したか。
自分もやる気満々だった。レジだってやる。ロゴもデザインする。新たなスタート。
三ヶ月後、
「シュガーパインマート♡」
がオープン。
国で最悪の治安エリアで。
しかも、四大マフィアシンジケート——レッドゲート、クォーツウェイク、アダー・スムーア、アイアンハルター——がせめぎ合う領土のど真ん中。
父に「区画指定のミスじゃないのか」と尋ねた。
父は「家賃が安い」とご満悦。
こうしてあなたは、領土の地殻変動に挟まれたパステルピンクの店でレジ係をやる羽目に。
冷蔵庫の前で敵対グループが出くわせば即カウンター下に身を伏せる癖もついた。ポテチが投げつけられ、袋がいつ破裂するかの計算はお手の物。
今までは下っ端の実行部隊が限界だった。うるさい、感情的、ドラマティック——なんとかなるレベル。
本当に怖いのは“幹部”たち。
伝説の人たち。
その名が囁き声で語られ、小さな侮辱で戦争が勃発するような短気。例えば「最後のアイスティー飲まれた」だけで。
毎日、彼らの複数が店内で鉢合わせしませんようにと祈っていた。
もしそうなったらシュガーパインマートは戦場になり、歴史的名所にされてしまう。
だから祈る。
だが人生は残酷を選ぶ。
ある日、何も変わらぬ空の下、ドアチャイムが鳴った。
一度。
二度。
三度。
四度。
レジから顔を上げると——4人全員が同時に店の中に立っている。
当然だ。
やはり。
まずサビンが乱入——白いファーコートをはためかせ、ドヴの肩にぶつかる。
「てめえの汚ねえ鱗をどけろ、黙り野郎」
と彼は唸り、すでにピストルを抜きドヴの頬骨に突きつける。
ドヴも間髪入れずカーブした刃をサビンの顎先に当てる。
「次の一言で、お前の舌をサクサク袋に入れて母ちゃんに送ってやる」
次にペターが突進してきて銃を振り回す。
「二人とも黙れ、膝ブチ抜くぞ」
最後にシリルがすり抜け、ペターの耳元に銃口を向ける。
「素敵だな。でもここで撃ち合ったら、現場は一気に犯罪現場、営業終了だ」
4人の「今ここで殺してやる」視線がパステルピンクのキルボックスに交錯。
サビンの笑いは濡れて獣じみている。
「もうウンザリだ。タバコを買う度にお前らのツラ拝むのはご免だ。このクソ店を俺が買い取ってレッドゲートのド真ん中に移す。お前ら、永久出禁な」
ドヴの黄色い目は一切動かない。
「こっちも同じだ。アダースムーアの影——俺の店。お前の甲高い声も、お前の毛皮も、もう相手にしなくて済む」
シリルは尿の臭いでも嗅いだように吐息する。
「リースもらって、クォーツウェイクの安全ゾーンに移し、金庫みたいに管理する。これでくだらない連中で視界を汚されず済む」
ペターの声はまさに砂利。
「アイアンハルターの縄張り——俺の店、俺のルール。明日には移動する。他の3人は絶対に領内に入るな、じゃなきゃ瓶のフタみたいに耳を集めることになるぞ」
全員が、ごく僅かにだけ武器を下げ、しかし抜き身の殺意で睨み合う。
そして「賃貸、ゾーニング許可、移転届……全部あなたの署名が必要だ」という現実が、一斉に彼らに突き刺さる。
四つの視線がぴたりとあなたに向きを変える。
サビンの唸り声が、ゆっくりと、歪んだ笑みに変わっていく。赤い目が半秒ほどあなたの口元を見つめ、意図を込めまっすぐまた見上げる。
ドヴが音もなく歩み寄り、黄色い視線があなたの喉の線をなぞる——すでに形状を記憶したかのように。
シリルは背筋を伸ばし、グローブ越しの指を一度だけくの字に曲げる。青い瞳が細まる。まるで、あなたの鼓動を揺らす圧の正確な値を思い描くかのごとく。
ペターが一歩踏み込み、大きな体が光の半分を遮る。緑の視線は熱く、空気が重たくなる。
誰も武器を下げ、緊張は「殺す」からもっと個人的なものへ。
もう彼らは互いを睨んでいない。あなたを見ている。
恐怖と血で帝国を築いた4人の男たちが、今や何でも差し出す気でいる……現金、秘密、安全、権力……足が震えるほどの夜すら……自分の名前を書いてほしい、そのためだけに。
あなたの番だ。