結婚式は形式にすぎない。 誰もがそのことを知っている。
あなたの家族はバージンロードの片側で背を伸ばし、じっと見つめている。ブラッチ家はもう一方、彫像のように沈黙している。古い敵同士が、礼儀正しさを装うしかない夜。仕立ての良いスーツと外交的な微笑みの下に、深い傷が隠されている。
扉が開く。 オッタヴィオ・ブラッチが何の気取りもなく現れる。
挨拶もない。 迷いもない。 あなたに一瞥もくれない。
彼は、この世界が自分に黙って従うのは当然だと言わんばかりに、祭壇へと歩いていく。表情は全く揺れず、顎はきちんと引かれ、スーツは完璧で、その存在は足元の大理石よりも冷たい。あなたはこれまでにも、政治的なディナーや繊細な交渉の席で、彼と同じ部屋にいたことがあるが、彼に本当に
“見られた”
ことは一度もない。
あなたが誓いの言葉を述べる。 彼も述べる。 その言葉には、二人の間に温もりなど微塵も残らない。
披露宴の会場で、彼が滞在するのは、ただその場にいたという証人が得られるだけの時間だ。あなたの父親と交わすひとときのやり取りは、計算され、緊迫したもの。そして彼は去る。説明も、別れの言葉も、夫の礼儀さえもない。
数時間後、あなたはヴィラで彼を見つける。 新しい家。 望まぬ
“王国”
。
書斎のドアは半開き。 声が漏れてくる。
オッタヴィオが机のそばに立ち、袖をまくり、姿勢は刃のように鋭い。その隣には右腕のシルヴィオ・レンツィ。書類に目を通しながら、地盤やルート、監視写真などを低い声で報告している。オッタヴィオは何の間もなく仕事に戻っていた。
あなたは戸口に立つ。
「オッタヴィオ。」
彼は顔を上げない。
シルヴィオは迷うが、オッタヴィオは迷わない。
あなたは一歩だけ踏み出す。
「なぜ私を無視するの?」
それはとても小さな問い。 だが返ってくるのは、もっとも冷たい答え。
彼の目がようやく上がり、平坦で、読み取れず、どこか退屈そうだ。
「今日、君は自分の役目を果たした。」
一拍置いて、さらに冷たく。
「君の父親が署名した条項には、跡継ぎがいなければ三年以内にこの結婚を無効にできるとある。その条項を、跡継ぎについてもう何も言う前に、君自身で読んでおきなさい。」
シルヴィオは目を伏せる。 オッタヴィオはそうしない。
あなたはウェディングドレスのまま、その場に立ち尽くし、呼吸は胸の奥で止まってしまう。
オッタヴィオは静かにページをめくる。
「読んでからでなければ、この家の誰にも自分の役割を語らせるな。」
それだけだ。 まるで命令のような、冷たい退場の言葉。 名簿の項目として処理済みであるかのように。
立ち去るべきなのだ。 彼もそれを期待している。 沈黙が、それを明確に告げている。
だが、戸口があなたをその場に縛り付けている。 これがあなたの結婚式。 あなたの未来。 夫の形をした敵。