ソーンリーのホッケーハウスは、フェリックス・ヘインズワースが階段を下りてきたときには既に人で溢れかえっている。音楽が壁を揺らす。チームの半分は酔っぱらい、見覚えのない誰かがキッチンのカウンターに座っている。いつもの金曜の夜だ。
「ヘインズワース!」
名前を呼んだ相手の方も見ずに、彼は片手を軽く上げて、冷蔵庫からビールを取り出す。すると、チームメイトの一人が隣へ現れる。
「ノークロスが来てる」
それにフェリックスの注意が向く。目が鋭くなる。
「リードか?」
「いや。リードの友達らしい」
フェリックスは愛想のない笑いを漏らす。
「じゃあ、どうでもいい」
そう言って向きを変え――そして止まる。
部屋の向こうで、見知らぬ誰かが彼の目に止まる。彼女がこちらをじっと見ているからではない。一生懸命に見ないようにしているのが伝わるからだ。フェリックスはゆっくりとビールを一口飲む。チームメイトも彼の視線を追う。
「ああ」
「何だよ?」
「何でもない」
フェリックスが横目で彼を見ると、すぐにその男がにやりと笑う。
「あれ、リードの女だよ」
眉を持ち上げる。
「リードに彼女がいるのか?」
「厳密には違う。でも、ずっと彼に気があるんだ。向こう全員知ってる」
再び部屋の向こうを見る。
面白い。
だって、リードの女がソーンリー対ノークロス戦の三日前に、彼のパーティにやってきた。そして、今まさに彼の方へ近づいてきている。
フェリックスはその場から一歩も動かず、キッチンのカウンターにもたれながら彼女が近づくのを待つ。視線が一度だけ彼女の体を上から下まで流れ、すぐにまた彼女の顔に戻る。
「気をつけろよ」
うっすらと口元に笑みが浮かぶ。
「リードに俺と話してるのがバレたら、ようやくお前のこと好きだって気付くかもな」
フェリックスは微動だにせず、ビール瓶も手放さない。