月曜日 22時41分 | ソーンウッド邸
雨が窓を激しく叩きつけ、庭園を銀色のカーテンの下に沈めていく。
今夜、あなたは家にいないはずだった。
チャリティーディナーは早く終わった。
運転手が玄関に車をつけるやいなや、あなたは大理石のホールへ足を踏み入れる。
すぐに、何かがおかしいと気づく。
屋敷が静かすぎる。
階段で待つ使用人はいない。
アンブローズの書斎に明かりはない。
図書室からも声はしない。
そのとき、コートが目に入る。
クリーム色のウール。
金のボタン。
アンブローズの黒いオーバーコートの隣に掛かっている。
見覚えがある。
彼女と一緒に選んだものだ。
イザドラ。
あなたの親友。
視線が落ちる。
コンソールテーブルに、ワイングラスが二つ。
片方の縁には、うっすらと口紅の跡が残っている。
上の階から音楽が流れてくる。
低く。
くぐもって。
夫婦の寝室の方向から。
アンブローズが何か月も前に、あなたと分かち合うのをやめた部屋。
雨音に紛れて、階段を上るあなたの足音は消える。
一段。
また一段。
寝室のドアは半開きになっている。
中で、女が小さく笑う。
イザドラの笑い声。
続いて、アンブローズの声。
聞き取れないほど低い。
手の下で、ドアが動く。
静寂。
イザドラがベッドの脇に立っている。アンブローズの白いシャツを着て。
素足。
ほどいた髪。
ドレスは肘掛け椅子に掛けられている。
アンブローズは窓際に立ち、シャツの上のボタンをいくつか外している。
結婚指輪がランプの光を拾う。
残酷な一秒、誰も動かない。
イザドラの顔から血の気が引く。
「あなた――」
アンブローズが振り返る。
灰色の瞳が、あなたを捉える。
衝撃がその顔をよぎる。
そして消える。
顎が硬く引き締まる。
イザドラがシャツの裾をぎゅっと握る。
「説明させて」
アンブローズが勢いよく彼女に顔を向ける。
「黙れ」
たった一言。
冷たく。
揺るぎなく。
イザドラは口をつぐむ。
アンブローズが再びあなたを見る。
その顔に、謝罪はない。
動揺もない。
あなたが踏み込んだものを隠そうとする素振りもない。
あるのは、昔からの怒りだけ。
写真が届いて以来、二人のあいだに居座り続けてきた、あの怒り。
でっち上げのメッセージを読み、それをあなたの否定よりも重いと決めつけさせた、あの怒り。
彼の視線があなたの表情をなぞる。
あなたの顔に浮かんだ裏切りを見て、何かが瞳の奥でちらつく。
痛み。
もしかしたら、後ろめたさ。
だが、プライドがそれを握りつぶす。
アンブローズはベッドサイドテーブルのワイングラスに手を伸ばす。
指がグラスを強く握りしめる。
「戻りは明日のはずだっただろう」
イザドラが彼の名をささやく。
「アンブローズ……」
グラスがテーブルに叩きつけられる。
「やめろ」
イザドラはびくりと身をすくめる。
彼の視線は、一瞬もあなたから離れない。
「断りもなく俺の部屋に入ってきて、許されない罪でも犯したかのように俺を睨みつける。それで、俺が恥じ入ると思ったのか?」
声が大きくなる。
「お前がしたことの後で?」
彼の背後で、雨が窓ガラスを打ち割らんばかりに叩く。
彼が一歩、近づく。
「お前は俺に嘘をついた」
もう一歩。
「何か月も」
顎に力がこもる。
「俺を隣に立たせたまま、俺を笑いものにしていたんだ」
イザドラは彼の肩越しに見つめている。
黙って。
あまりにも黙って。
握りしめた拳の中で、指輪がまたきらめく。
あの指輪。
彼がどうしても外そうとしなかった指輪。
ソーンウッドの誓約に結びついた指輪。
あなたが壊したと彼が言い張る、その結婚の証。
アンブローズは、あなたの視線がどこに落ちたかに気づく。
表情が獰猛に変わる。
「何だ」
沈黙が引き延ばされる。
やがて、彼の口元が苦々しく歪む。
「お前に、裏切られた顔をする資格はない」
イザドラの目が、ちらりと彼に向く。
彼女でさえ、驚いているように見える。
アンブローズは、数歩の距離まで詰め寄る。
「その資格は、お前が他の男を選んだ夜に失ったんだ」
声が低くなる。
「だから、お前がここで俺に何を期待していたにせよ――謝罪でも、罪悪感でも、後悔でも――忘れろ」
彼の背後で、イザドラが目を伏せる。
だが、その唇にかすかな満足の影がよぎるのを、隠しきれていない。
アンブローズはそれに気づかない。
彼はまだ、妻を見据えている。
まだ、結婚指輪をはめている。
まだ、妻の親友の隣に立っている。
まだ、先に誓いを破ったのはお前のほうだと信じ込んでいる。