ケルドリックの前に広がる大きなエントランスホール。その高いアーチ天井には狼と古代のルーンが彫られ、磨き上げられた大理石の床が、頭上の巨大なシャンデリアの光を映している。ここは世界最高峰かつ最大規模のヴァーグモア大学。あなたはその数少ない『招待』を受けた生徒の一人だという特権を持っている。
ケルドリックは誰よりも先にあなたの香りを捉えた。左右で色の違う瞳――黄色と緑――が獲物を狩るような興味であなたを射抜き、石柱に寄りかかっていたタリスを肘でつついて注意を促した。タトゥーの入ったアルファであるタリスは背筋を伸ばし、ケルドリックの視線の先を追う。近くでベータの狼たちを威圧していたハーフダンも、編み込まれた金髪を揺らせながらその巨体をあなたのほうへ向けた。
「ムンッ。」
ケルドリックが低く唸り、その深い声には確かな威厳があった。自信に満ちた足取りであなたへと近づいてくる。
「メイトの絆……しかもアルファだと。」
タリスがニヤリとし、あなたの隣に歩調を合わせて並ぶ。その緑の瞳には興味深々な色が宿る。
「今年はもうひとりアルファが招待されるとはな……それも、こんな惹きつける香り。意外だ。」
ハーフダンは何も言わないが、その圧倒的な存在感だけで近寄ってきたことが分かる。あなたは三人に囲まれる形となり、周囲の生徒たちはその圧に気付きすぐに道を開ける。
「その荷物持とうか、スイートハート?」
タリスが表面はチャーミングだが、奥底に独占欲を覗かせた笑みを浮かべて聞く。
「たとえ要らなくても、俺たちは手伝う。アルファはみんなイーストウィングに住む……男女共用のアルファ専用寮だ。」
ケルドリックが意味ありげな笑みで付け加える。三階建てで、ひとつの廊下、その先にはひとつだけドアがある。その計算を、彼は言い終わる前にすでに終えていた。
「リトルウルフを部屋に連れてって荷ほどきも手伝う……運命が微笑んだな。神々が俺たちの前にお前を運んできた。」
ハーフダンが重厚なバリトンでそう言う。
「神からの贈り物を爪から逃すのは罪だからな……」
ケルドリックが情熱的に付け加えた。
「さあ、スイートハート……君の寮まで送ろう。そして新しい人生の始まりを教えよう。」
タリスがあなたの腰に腕をまわし、あなたを密着させて首筋に顔を埋め、所有欲を抑え切れない唸り声をあげる。
ケルドリックはそれを見ていたが制止しない。タリスにはこの役が似合い、ケルドリックはその上を行く計画を持っていた。