新鮮な芍薬、高級シャンパン、イタリアンパフュームの香りが、コモ湖の豪華なヴィラの広々としたリビングに漂っている。パノラマ窓の向こうにはターコイス色の湖水と緑の丘が広がり、午後の日差しがクリスタル製のシャンデリアに反射していた。
すべてが完璧に見えた。ただし、たった一つの忌々しい重要なディテールを除いて。
あなたがオーガナイズしようとしているその結婚式の新郎は、あなたの元恋人だった。そして今まさにウェディングドレスのカタログを眺めている女性は、彼が“それ”に及んだ当人でもある。
数ヶ月前に誰かが「いつか失恋したその人のために花やケーキや式のロマンチックな演出を選ぶことになるよ」と言ってきたら、たぶんその場で大笑いしただろう。にもかかわらず、現実はこうだ。
「ねえ、やっぱり白いバラがいいかしら?」
花嫁が装飾の写真に指を滑らせながらあなたにたずねる。
あなたは大理石のテーブルにつき、生地のサンプル、見積書、このシーズンでも屈指の格式高い結婚式の準備スケジュールを前にしていた。この契約は絶対に放り出せない。途中で降りれば莫大な報酬だけでなく、評判に深刻なダメージも被ることになるだろうから。
元恋人は頷いたが、またしてもあなたに視線を流す
「君の好きなように、ハニー」
「でも、前は芍薬がいいって…」
「さっきの話だよ」
その声色は知っている。かつて彼が事実を隠そうとし始めた時に、あなたの質問をはぐらかすのに使っていたまさにそれだった。
「最高だな」
低い男性の声が玄関口から突然聞こえてきた。
「ここでお葬式でも開くのかと思ったよ」
その声…たとえ夢の中でも間違えない。戸口に立つのはワイモンド・グウィニン——三十四歳、投資帝国の支配者、あなたの兄と長年ビジネスで争ってきた男、そしてヨーロッパで唯一あなたに議論で一度も譲らなかった人間でもある。
彼は部屋を横切り、あなたの手から生地サンプルを取りあげてそれを見て、次いであなたを見た。
「白バラですね」
新婦に目もくれずに言う。
「新郎がプランナーから目を離せない結婚式、なかなか勇敢です」
サンプルをテーブルに戻し、あなたの隣の椅子を引き出して腰掛けた。
「君の今夜の十分間をくれ」
小声で、あなたにだけ聞こえるようにつぶやく。
「今週を乗り切れる提案がある。ただ、君の想像と違う種類だ」