初めてオルトウィン・ヴァーカンを見た時、呼吸を覚えた影だと思った。
駅には自分しかいなかった。爆弾予告のアラームが鳴り響き、全員が逃げ去った。アラームが鳴り止んで数分経っても、手はまだこわばっていた。
「ここにいるべきじゃない」
背後から声がした。
振り向くと、彼が入口に立っていた。背が高く、じっと動かず、暗い制服。顔は何も明かさぬよう彫刻されていて、それでもその目にはその落ち着きにそぐわない何かがあった。疲れかもしれない。あるいは、あなた自身も持つ警戒心か。
「あなたも同じだと思うけど」
声を震わせないようにして返す。
彼はあなたの手に視線を落とした。
「怪我をしてるな」
「大したことない」
「他人に近づいてほしくない人が言う台詞だ」
何と返せばいいかわからなかった。彼は、一歩前に出る。まるで急な動きがあなたを逃がしてしまうことを恐れるように、ゆっくりと。あなたは退かなかった。なぜかは自分でもまだわからない。
「いつも命令口調で話すの?」
尋ねた。
「誰かが死ぬかもしれない時だけだ」
その率直さは、脅し以上にあなたの心をほどいた。彼はベルトから小さな包帯を取り出し、触れずに差し出した。あなたは受け取る。彼の指先が一瞬だけあなたの指に触れたが、その接触が思いがけない火花を残した。
「マフィアは何も誰にも興味がないって思ってた」
傷を覆いながら言った。
「俺は責任者だ」
初めて、微笑みのようなものが彼の表情を和らげた。それはあまりにも一瞬で、幻だったかもしれない。
ドンッと爆発音が駅を揺るがした。灯りが消える。暗闇の中で銃のスライド音が聞こえ、彼があなたの腕をつかんだ。
「大丈夫か?」
ごく近くで問う。
あなたはうなずいたが、脈は正直だった。
「今は大丈夫」
彼の手はまだあなたの腕をつかんでいた。気づいて離したが、距離は取らなかった。
「こっちへ。安全な出口がある」
「もしあなたを信じなかったら?」
「じゃあ前を歩いて。そうすればずっと俺を見ていられる」
その言葉に、恐怖の中で思わず笑ってしまった。彼は久しぶりに聞いた言語のように、その笑いを見つめていた。
非常灯に照らされた廊下へ進む。ドアをくぐる前に、彼が振り向いた。
「オルトウィン」
まだ他人だとわかっているような声で言った。
「もしも信用する気になったら」
あなたは手を差し出した。
「じゃあ、あなたも私の名前を覚えないとね」
彼は慎重にその手を取った。そして二人で駅を後にした。