劇場裏の廊下には冷たい空気が漂い、新しい塗料と冷めたコーヒーの香りが混じっている。あなたは喧騒から逃れ、一時の静けさを求めてここに滑り込んだ。メインロビーを埋め尽くすファンやミート&グリートの混乱を避け、壁にもたれ、手にはくしゃくしゃのプレスパスを握っている。その時、重い非常口のドアが突然大きな音とともに開いた。
最初に目に入るのは、外のステージの光に縁取られた巨大なシルエットだけ。しかしドアがカチッと閉まると、薄暗い廊下に侵入者の顔が現れる。
彼だ。
「ちょっとだけ待ってくれ」
低く静かだが、荒い声で、すでに片手をあなたとの間に上げながら彼は言う。
フィオンタン・ハラルディは、あなたから2メートル足らずの場所に立ち、わずかな苛立ちをはらんだ息をついている。眉まで引き下ろされた濃いウールのキャップと、肩幅をより強調する黒いジャケット。スクリーンで何度も見かける表情豊かな眉は、今は純粋な苛立ちにしか見えない。この場所で彼はパパラッチから逃れ、一時の安息を求めている——裏口が見つかったばかりで、フラッシュと声から逃げ込んだ形だ。
あなたの存在に気づくと、フィオンタンは目に見えて緊張した。身体がわずかに縮こまり、防御の姿勢を取る。まるであなたがスマートフォンを取り出して録音したり、叫び出したりするかもしれないと身構えているように。
息が詰まる。そのほぼ二メートルある体躯がこの狭い空間にいるだけでも圧倒されるが、あなたを動かしたのは彼の目に浮かぶ脆さだった。熱狂的なファンのように振る舞うかわりに、保護したいという衝動が勝る。
「ここじゃダメだ」
喉の奥で心臓が鳴っていても、あなたは毅然とささやく。
「劇場の警備はこの廊下の奥に集まりやすい。見つかるよ」
フィオンタンは意外そうにあなたを見つめる。その強く重い視線が一瞬であなたを値踏みする。
「それじゃ、どこに行けばいい?」
バリトンが廊下に低くこだまし、かすれたささやきが背筋を震わせる。
「ついてきて」
この会場で何度も取材しているあなたには馴染み深い、目立たない金属製のドアへ早足で向かう。かつて使われていた照明制御室だ。ノブを回し、ドアを開け、うなずいて彼を促す。フィオンタンもためらわない。少しかがんで敷居をくぐり、暗い小部屋に入る。あなたもすぐその後に続く。遠くで彼を探す足音と声が響き始めた時、そっとドアを閉めた。
この空間はたった三平方メートルほどで、古いケーブルや、タープがかかったコンソール、空中に浮かぶほこりでいっぱい。フィオンタンが中に入ると、部屋がさらに狭く感じられる。その近さは、思わず笑ってしまいそうになる。彼の体から発せられる熱気と、ジャケットから漂う松と革の香りがはっきり伝わる。
「ありがとう」
数秒の静寂を破り、フィオンタンがそう言って緊張感を和らげる。
キャップを脱ぎ、少し乱れた髪を見せながら、古いテーブルによりかかる。見上げるあなたとの身長差は一目瞭然で、その顔に、ゆっくりと、疲れと同時に信じられないほど温かな笑顔が広がる。目尻に小さな、ささやかなシワが現れる。
「僕はフィオンタン。よろしく」
巨大な手を差し出され、その素朴な仕草に、この物置のような場所で映画スターと隠れていることも一瞬だけ忘れさせられる。