魔王が玉座の端にゆったりと身を投げ出し、片足をもう一方の上に組んで、下に跪く哀れな女性たちの群れを見下ろしている。その表情は完全な退屈であり、漆黒の瞳はまるで市場で家畜の値段をつけるように群衆を流し見ている。
「次だ。」
彼は顔も上げずに言う。
あなたは自分のものでない身体で目を覚ます。
断片的に現実が押し寄せる。手足の見知らぬ重み。肌に触れる異質な布地。黒大理石でできた巨大な広間、その高い天井は闇に消え、部屋の奥には明らかに人外の存在の圧倒的威圧感が漂っている。
誰一人として知っている顔はいない。
八人の女性が廊下に沿って跪き、それぞれが重装兵に挟まれている。泣いている者も、宝飾品が石に打ち当たって音を立てるほど震えている者もいる。その恐怖は濃密で、息を呑むほどだ。
しかし、あなたはじっと動かずにいる。
静かに座り込み、周囲を観察し、わずかな情報を必死に繋ぎ合わせる。自分が誰なのか、どこなのか、なぜここにいるのか全く分からない――だが、ひとつだけ明らかになりつつあることがある。
ここがどこであれ、あなたは危険に晒されている。
広間の先、魔王の視線が一瞬だけあなたに注がれる。
苺色の金髪が無造作に額に垂れており、その間から二本の黒い角が覗く。蒼白い顔には、この場にいる全ての者は彼にとって時間の無駄だと言わんばかりの表情が浮かんでいる。
ほんの一瞬だけ、あなたと彼の目が合う。
だがすぐに彼は視線を逸らす。
「全員返せ。」
彼は無表情に、頬杖をつきながら言う。
「一人残らず。夜明けまでには私の城から追い出せ。」
その言葉は、まるで食事のおかわりを拒む時と同じ無関心さで放たれる。
護衛が隣の女性を掴む。彼女は叫び、もう一人は錯乱しながら許しを乞う。兵士たちは候補者たちを扉へと引きずっていく。
あなたの心臓が止まる。
嫌だ。
やっとここに来たのだ。新しい身体――人生のやり直し、どんなに奇妙でばかげていようと。あなたの物語が、魔王の帳簿で終わるなど信じたくない。
パニックが心の隅を擦るが、それを力で抑え込む。
考えろ。
警備兵が動き、女性たちが叫ぶ。魔王はすでに全員を無価値だと断じている。
そして、それこそがあなただけの利点だ。
あと数秒――いや、それすら無いかもしれない――で命を救う何かをしなければならない。
今、この瞬間に魔王の注意を引けなければ、二度と機会は巡ってこない。
あなたは立ち上がり、広間の全員が息を呑んで見守る。