勝利のキス
全米選手権の日
選手用ラウンジは、フットボール選手、友人、ガールフレンドたちで賑わい、チャンピオン決定戦前の最後の時間を楽しんでいた。
その騒ぎの中心に座っていたのは、ジャレン・エルモードとマラン・ヴェスク。
クォーターバックとワイドレシーバー。親友同士。キャンパスの王様。女性の注目を切らしたことのない、並外れてハンサムで馬鹿みたいに人気の二人。
そして、残念ながら、自分たちを面白いと思っている二人でもある。
「なあ」
とチームメイトの一人が笑いながら君の方を指差す。
「おい、マジで、どっちかの奴、彼女をデート対象に考えたことある?」
ジャレンが椅子にもたれながら、にやりと笑った。
「悪いけど、興味ない。今まで一度もないよ。」
マランは鼻で笑った。
「彼女は好きだけど、絶対にないな。」
「一度も?」
「キャンパス最後の女性だとしても、絶対ないね」
とジャレンが返す。
マランがグラスを持ち上げた。
「やっと何か意見が合ったな。」
部屋は笑い声でいっぱいになった。
だが、誰も知らなかった。ジャレン・エルモードはほぼ一年、君と秘密で交際していたことを。
マランさえも。
⸻
キックオフ1時間前
スタジアムの廊下は人の流れでざわめいていた。用具係が急いで行き交い、コーチたちは大声で指示を出し、警備員がIDを確認していた。
ジャレンはチームのエントランス近く、少し静かな通路に立っていた。ヘルメットを片腕に抱えながら。
いつもの自信満々な笑顔が、少しだけ和らいだ。
「ねえ。」
彼は隣の通路を一瞬見てから、そっと君に近づいた。
「あいつら、何も考えないで言ってるだけだよ。わかってるだろ?」
彼の親指が優しく君の頬に触れる。
「今夜が終われば、きっと変わる。絶対に約束する。」
もう一度、君をじっと見つめる。
「エルモード!行くぞ!」
誰かがロッカールームから叫んだ。
ジャレンは一歩下がりながら、笑う。
「チャンピオンになってくるよ。」
最後にもう一度だけ後ろを振り返る。
「愛してる。」
そして彼は廊下の奥へ消えていった。
⸻
4クォーター後
00:03 — 第4クォーター
大学は4点ビハインドで追っていた。
7万人が立ち上がり、世界中のテレビの前にも何百万人もの視聴者。
ジャレン・エルモードがスナップを受ける。
後ろへ下がる。
フィールドを見渡す。
エンドゾーンへと駆け抜けるマラン・ヴェスクを見つけた。
投げる。
マランがジャンプ。
キャッチ。
タッチダウン!
時計はゼロを示した。
スタジアムが爆発的な盛り上がりを見せる。
優勝だ。
ジャレンはヘルメットを脱ぎ、チームメイトたちに囲まれる。マランが駆け戻り、両肩をつかみ、叫ぶ。
「やったな、この最高のバカ野郎!」
天井から紙吹雪が降り注ぎ、群衆はどよめき、テレビカメラは祝福の渦の中で金色のクォーターバックを追い続ける。
そして、誰かがサイドラインから叫んだ。
「ジャレン!お前の彼女だぞ!」
リサが低い柵の向こうで、チアリーダーのユニフォームで笑い、手を振っていた。
マランはジャレンの視線を追った。
「なあ、行くしかないだろ。」
ジャレンは笑う。
「うるせえよ。」
「早くキスしに行けよ!」
ほかの選手たちも輪に加わった。
カメラがリサを映す。
観客の歓声が高まる。
ほんの一瞬、ジャレンは迷った。
顔を上げて、君を探す。
だが君はいない。
彼はにやりと笑う。
そして走り出す。
柵を飛び越え、リサの腰を抱き、頬に手を添えてキスをした。
スタジアムは大歓声に包まれた。
マランは両手を突き上げて叫ぶ。
「さすがだぜ、相棒!」
フラッシュがたかれる中、リサはジャレンの首に腕を絡める。彼女は君のことを知らない。
巨大なスタジアムのスクリーンに、あのキスが何度もリプレイされる。
そして、ほんの数フィート離れた場所で、君はすでにその場を背にしていた。彼が
「愛してる」
と言った相手が。
誰にも知られていないガールフレンド。
ジャレンはキスから顔を上げ、君を見つけた。
柵を乗り越えて君の元へやって来る。
「行かないで。僕を見て。スクリーンじゃなく、僕を。」