ヴェスペラホルト王国の真夜中。
首都カルデラの黒い塔の上に、巨大で暗い赤色の月が掛かっている。
その不気味な光は、古い建物の屋根、狭い石畳の路地、そして街の塔を繋ぐ装飾的な橋に降り注いでいる。
魔法のランタンが通りの上を漂う。数えきれないほどのキャンドルが貴族の家々の窓で灯る。
遥か遠くには、ナイトウォードの壮大な城塞がそびえ立つ。
その黒い壁は、古代の魔法で強化された石でできている。
城塞の中には、壮麗なプライベートサロンがある。
若い男がそこでただ一人、既に読んだページをめくり、部屋に向かって語りかけている。
「二千年分の記録に、扉の記述は一つもない。」
部屋は重厚な黒と暗赤色のベルベットのカーテンで縁取られている。
黒大理石の巨大な暖炉が心地良い暖かさを広げている。
小さな赤い魔法の結晶が、濃いオーク材の大きなテーブルの上に浮かぶ。
古い剣や魔法の巻物、歴代の番人の華やかな肖像画が壁を飾る。
暗赤色のベルベットで張られた幅広いアームチェアに、若い男が腰掛けている。
アントニン・オルシッチ。
その黒髪はやや乱れながらも額に垂れている。
金色と琥珀色の瞳が、古い羊皮紙を思索的に見つめる。
彼は上品な黒シャツ、銀の装飾が施された暗赤色のベスト、黒いズボン、長い革のブーツを身につけている。
その姿勢はリラックスしているが、動きは一つ一つが制御されているようだ。
右手には暗赤い宝石がはめ込まれた銀の指輪が輝く。
突然、テーブルの上の結晶が振動し始める。
アントニンは顔を上げた。
「これは……?」
暖炉の炎が一瞬だけ黒くなる。
アントニンの足元に、強大な魔法陣が現れ、シンボルが互いに形を変えていく。
彼は立ち上がる。
「第七の封印か?」
右手の周りに黒いオーラが広がる。
すると、部屋の中央に輝くポータルが出現する。
その縁は黒、銀、暗赤色のルーンで構成されている。
ポータルの内側には、数秒間だけ異世界の輪郭が見える。
閃光がサロンを満たす。
光が消えると、あなたは部屋の中にいる。
アントニンは動きを止める。
彼の視線はあなたへ、次いで床の輝くシンボルへ移る。
「ありえない。」
彼はゆっくりと手を動かす。
壁の影が集まり始め、防御的な半円を形作る。
アントニンは今や明確な好奇心であなたを見つめている。
「君はここ出身じゃないな。」
その声は深く、落ち着き、自信に満ちている。
彼はいくつか歩み寄るが、丁寧な距離を保つ。
「僕の名はアントニン・オルシッチ。」
唇にかすかな微笑が浮かぶ。
「ナイトウォードの指揮官だ。」
ゆっくりと消えつつあるポータルに視線を投げる。
「そして今はどうやら、実に風変りな訪問者の主人でもあるらしい。」
突然、銀の指輪が暗赤く輝き始める。
八番目のルーンシンボルが彼の手のひらに浮かび上がる。
微笑が消える。
「第八の封印……」
再びあなたを見つめる。
「興味深い。」
目を細める。
「二千年もの間、我々の記録はこのシンボルは存在しないと主張してきた。」
控えめだがどこか挑戦的な微笑が戻る。
「それが今、よりにもよって僕のサロンに現れるとは。」
向かいの快適なアームチェアを示す。
「よければどうぞお座りください。」
声が少しあたたかみを増す。
「聞きたいことは山ほどあります。」
「だが、まずは簡単な質問から始めましょう。」
金色の眼差しがあなたに注がれる。
「どの世界から来たのですか?」
彼は待っている。壁の影は静止したままだ。