あなたが忘れられない二人の女性が、同じ冒険者パーティにいる。そしてお互いその存在を知らない。契約は夜明け出発だ。
冒険者ギルドはいつも通り賑わっている。冒険者たちが行き交い、装備の音が響き、会話がホールを満たしている。あなたが用事に取り掛かろうとしたその時、受付係が突然あなたに声をかける。 「ねえ!そこのあなた!少しいい?」 受付係はカウンター越しに身を乗り出し、いつもよりも熱心な表情を見せている。 「ちょっと興味がありそうな仕事があるの。高報酬、緊急依頼、それにあなたみたいな経験者を欲しがっているらしいよ。報酬だけで数か月分の生活費にはなるし、新しい装備でも買えるんじゃない?」 「パーティはもうアンバー・ハートの酒場に集まってる。リーダーはブラム・コードって大柄なハーフオーク。明け方には出発する計画だから、興味があるなら今夜中に話しておいた方がいいよ。」 「詳しいことは私も全部は知らないけど、依頼主はかなりの額を出すって。私だったら話くらいは聞いてみるかな。」 --- アンバー・ハートの酒場は暖かく活気に満ち、焼き肉と焼きたてのパン、それにエールの香りが漂っている。タンクジョッキの音と会話のざわめきが、冒険者の酒場らしい馴染みの空気を作り出している。 部屋をざっと見渡すと、ビールジョッキを片手にした肩幅の広いハーフオークが一人でテーブルに座っているのが目に入る。近くにはハーフリングがいて、書類の束に目を通しながら時折カウンターの方へ視線を投げている。 二人の女性がその向かいに座っているが、人混みで少し隠れている。 ハーフオークがあなたの視線に気づき、手を挙げて招き寄せる。 「緊急契約の件で来たのか?よかった。ギルドから誰か来るのを期待していたんだ。」 彼はジョッキをテーブルに置き、親しみと慎重さの混じった視線を向ける。 「俺はブラム・コードだ。座りなよ。」 その隣のハーフリングはすぐに顔を明るくする。 「おお、素晴らしい!新顔だ。そしてもしかすると新しい呑み仲間だな。今夜はますますいい夜になりそうだ!」 ブラムは側目で彼を見てから、再度あなたに注意を戻す。 「詳しい話の前に、まずは——」 彼は言いかけて、女性の一人が顔を上げた。 一瞬、酒場の空気が静かになったように感じる。 ニーヴは固まったまま、ヘーゼルブラウンの瞳であなたをじっと見つめている。マグカップに指をかけたまま動きを止め、その堂々とした雰囲気がたちまち消え失せたようだ。彼女は少し視線を伏せ、まるで目をそらせば状況が現実でなくなると信じたいかのように見える。 「……やあ。」 その向かい側、ブロンドのドラゴンキンはエメラルドの瞳を見開き、あなたに気づくと驚きは一瞬だけ、すぐに椅子にもたれて腕を組み、見覚えのある自信ありげな表情を浮かべる。 「へえ、マジか。こんな多くの中で、まさかお前が送られて来るとはね。」 彼女は椅子の後ろで青銅色の鱗のついた尻尾を揺らしながら、挑発的な笑みを片唇に浮かべてあなたを観察している。 ブラムはフェイドラとニーヴとあなたを交互に見やる。咳払いしてまたジョッキに口をつけた。 「まったく。自己紹介がまだだったな。こいつはピップ。うちの専属ローグ兼スカウト、それと時折問題の元だ。」 ハーフリングは笑顔でジョッキを掲げ、元気よく挨拶する。 「よろしく!でも、この遠征中に起きるトラブルの責任は部分的に否認する権利は保留させてもらうよ!」 ブラムはそのコメントを無視して二人の女性を指さす。 「ブロンドのドラゴンキンがフェイドラ・ブラノラン。みんなそう呼んでる。彼女はうちのバトルメイジ。そしてその隣の人間がニーヴ、うちのスカウト兼斥候だ。」 パーティ内の親しみと、そしてどうしようもない気まずさが一層はっきりとしていくのを、ブラムは三人を見比べながらしばし黙る。 「……ま、反応を見るかぎり既に知り合いがいるようだな。」 彼は眉を上げるが、それ以上は突っ込まない。あなた方の過去については、この段階で詮索するつもりはないようだ。 「さて、契約の話に進もう。個人的な話は後回しでいい。」 ブラムは地図をテーブルに広げ、ジョッキで端を押さえる。 「依頼主は錬金術師コルヴィン・アスクのビジネスパートナーだ。アスクは数日前、未踏の古代遺跡を調査している最中に行方不明になった。珍しい素材を探していただけらしいが、戻って来なかった。」 「パートナーはアスクを見つけて、生きていれば家に連れ戻してほしいと言っている。研究ノートや採取したサンプルを無事に回収できれば、追加報酬もある。依頼料はかなりの額だが、依頼主は焦り始めている。このまま行方不明のままだと、助かる見込みがどんどん薄くなるからな。」 「夜明け出発だ。地図は未完成で、何が起こったのかまだ分からない。単なる事故かもしれないし、危険な獣や古い罠、あるいは全く予想外のものかもしれない。色々想定して、現地で状況に合わせて行動するつもりだ。」 「だからこそ慎重に行く、とだけは約束しよう。」とブラムはドライに返す。 再びあなたに向き直る。 「今夜中なら装備の調達もできるし、ギルドも遠征参加者向けにこの宿の部屋を割引で用意してくれている。必要なら宿の主人に相談するといい。」 ブラムの表情は、依然として率直でビジネスライクだ。 「それで、何か質問はある?契約についてでも、遺跡のことでも、パーティについてでも。我々は夜明けに出発するけど、その前に話しておきたいことがあれば今のうちだ。」 ブラムは地図をあなたの前に向け、ジョッキで端を押さえる。「聞きたいことは何でも聞いてくれ。それで、夜明けには一緒に出るのかどうか教えてほしい。追加でもう一部屋払うか決めなきゃいけないからな。」
あなたが忘れられない二人の女性が、同じ冒険者パーティにいる。そしてお互いその存在を知らない。契約は夜明け出発だ。
冒険者ギルドはいつも通り賑わっている。冒険者たちが行き交い、装備の音が響き、会話がホールを満たしている。あなたが用事に取り掛かろうとしたその時、受付係が突然あなたに声をかける。 「ねえ!そこのあなた!少しいい?」 受付係はカウンター越しに身を乗り出し、いつもよりも熱心な表情を見せている。 「ちょっと興味がありそうな仕事があるの。高報酬、緊急依頼、それにあなたみたいな経験者を欲しがっているらしいよ。報酬だけで数か月分の生活費にはなるし、新しい装備でも買えるんじゃない?」 「パーティはもうアンバー・ハートの酒場に集まってる。リーダーはブラム・コードって大柄なハーフオーク。明け方には出発する計画だから、興味があるなら今夜中に話しておいた方がいいよ。」 「詳しいことは私も全部は知らないけど、依頼主はかなりの額を出すって。私だったら話くらいは聞いてみるかな。」 --- アンバー・ハートの酒場は暖かく活気に満ち、焼き肉と焼きたてのパン、それにエールの香りが漂っている。タンクジョッキの音と会話のざわめきが、冒険者の酒場らしい馴染みの空気を作り出している。 部屋をざっと見渡すと、ビールジョッキを片手にした肩幅の広いハーフオークが一人でテーブルに座っているのが目に入る。近くにはハーフリングがいて、書類の束に目を通しながら時折カウンターの方へ視線を投げている。 二人の女性がその向かいに座っているが、人混みで少し隠れている。 ハーフオークがあなたの視線に気づき、手を挙げて招き寄せる。 「緊急契約の件で来たのか?よかった。ギルドから誰か来るのを期待していたんだ。」 彼はジョッキをテーブルに置き、親しみと慎重さの混じった視線を向ける。 「俺はブラム・コードだ。座りなよ。」 その隣のハーフリングはすぐに顔を明るくする。 「おお、素晴らしい!新顔だ。そしてもしかすると新しい呑み仲間だな。今夜はますますいい夜になりそうだ!」 ブラムは側目で彼を見てから、再度あなたに注意を戻す。 「詳しい話の前に、まずは——」 彼は言いかけて、女性の一人が顔を上げた。 一瞬、酒場の空気が静かになったように感じる。 ニーヴは固まったまま、ヘーゼルブラウンの瞳であなたをじっと見つめている。マグカップに指をかけたまま動きを止め、その堂々とした雰囲気がたちまち消え失せたようだ。彼女は少し視線を伏せ、まるで目をそらせば状況が現実でなくなると信じたいかのように見える。 「……やあ。」 その向かい側、ブロンドのドラゴンキンはエメラルドの瞳を見開き、あなたに気づくと驚きは一瞬だけ、すぐに椅子にもたれて腕を組み、見覚えのある自信ありげな表情を浮かべる。 「へえ、マジか。こんな多くの中で、まさかお前が送られて来るとはね。」 彼女は椅子の後ろで青銅色の鱗のついた尻尾を揺らしながら、挑発的な笑みを片唇に浮かべてあなたを観察している。 ブラムはフェイドラとニーヴとあなたを交互に見やる。咳払いしてまたジョッキに口をつけた。 「まったく。自己紹介がまだだったな。こいつはピップ。うちの専属ローグ兼スカウト、それと時折問題の元だ。」 ハーフリングは笑顔でジョッキを掲げ、元気よく挨拶する。 「よろしく!でも、この遠征中に起きるトラブルの責任は部分的に否認する権利は保留させてもらうよ!」 ブラムはそのコメントを無視して二人の女性を指さす。 「ブロンドのドラゴンキンがフェイドラ・ブラノラン。みんなそう呼んでる。彼女はうちのバトルメイジ。そしてその隣の人間がニーヴ、うちのスカウト兼斥候だ。」 パーティ内の親しみと、そしてどうしようもない気まずさが一層はっきりとしていくのを、ブラムは三人を見比べながらしばし黙る。 「……ま、反応を見るかぎり既に知り合いがいるようだな。」 彼は眉を上げるが、それ以上は突っ込まない。あなた方の過去については、この段階で詮索するつもりはないようだ。 「さて、契約の話に進もう。個人的な話は後回しでいい。」 ブラムは地図をテーブルに広げ、ジョッキで端を押さえる。 「依頼主は錬金術師コルヴィン・アスクのビジネスパートナーだ。アスクは数日前、未踏の古代遺跡を調査している最中に行方不明になった。珍しい素材を探していただけらしいが、戻って来なかった。」 「パートナーはアスクを見つけて、生きていれば家に連れ戻してほしいと言っている。研究ノートや採取したサンプルを無事に回収できれば、追加報酬もある。依頼料はかなりの額だが、依頼主は焦り始めている。このまま行方不明のままだと、助かる見込みがどんどん薄くなるからな。」 「夜明け出発だ。地図は未完成で、何が起こったのかまだ分からない。単なる事故かもしれないし、危険な獣や古い罠、あるいは全く予想外のものかもしれない。色々想定して、現地で状況に合わせて行動するつもりだ。」 「だからこそ慎重に行く、とだけは約束しよう。」とブラムはドライに返す。 再びあなたに向き直る。 「今夜中なら装備の調達もできるし、ギルドも遠征参加者向けにこの宿の部屋を割引で用意してくれている。必要なら宿の主人に相談するといい。」 ブラムの表情は、依然として率直でビジネスライクだ。 「それで、何か質問はある?契約についてでも、遺跡のことでも、パーティについてでも。我々は夜明けに出発するけど、その前に話しておきたいことがあれば今のうちだ。」 ブラムは地図をあなたの前に向け、ジョッキで端を押さえる。「聞きたいことは何でも聞いてくれ。それで、夜明けには一緒に出るのかどうか教えてほしい。追加でもう一部屋払うか決めなきゃいけないからな。」