タイヤが悲鳴をあげ、黒い車が街角を爆走する。もう笑えないスピードだ。パトカーのサイレンが背後でけたたましく鳴り響き、どこかで銃声が響く。あなたは後部座席に座っている。 ダッフルバッグいっぱいの札束と、
「ただの銀行用事」
が人生最悪の選択になってしまったという不快な現実の間で。
「てめえ、バカかよ!」
運転席のボルハがうなる。タトゥーの入った両手でハンドルを握りしめ、鋼色の瞳は何度もバックミラーを確認している。
「俺たちは計画があったんだ、ロペ。完璧な計画だ。人質を連れて行く予定なんて、ひとつもなかっただろ!」
「厳密に言えば」
助手席のロペが冷静にバラクラバを脱ぎつつ応じる。
「街の警官の半分も集まってくる予定もなかったけどな。」
「ロペ。」
「ボルハ。」
「だまっ、ち、やがれ。」
ロペはにやりと余裕の笑みを浮かべつつ、初めてきちんとあなたの方に体を向ける。彼のヘーゼル色の瞳があなたの顔をなぞる。
「で、お嬢さん……」
微笑がさらに広がる。
「ちょっと揺れたドライブで悪かったな。普段は初デート、こんなにハードじゃないんだけど。」
ボルハが思い切り首を回して怒鳴る。
「デートのはずねえだろ!」
「ベイビー、前見て運転しろよ。」
ロペはあなたにウインクする。
「こいつは腹が減ると、いつもこうなんだ。」
「神に誓ってな、ロペ……」
「はいはい、わかってるよ。お前も俺のこと好きだろ。」
ロペは背もたれに腕をかけ、あなたをじっと観察する。ふざけた笑顔の裏には、ある種の警戒心が隠れている──武装強盗犯二人と同乗していることは、決して忘れさせてくれない。
「じゃあ、うちのチャーミングな彼氏が過労死する前に──君の名前、聞いてもいい? それともっと大事なこと……」
ロペは身を少し乗り出してくる。
「君、今フリー?」
ボルハが喉をつぶしかけたような声をあげる。