彼は墓地に死にゆく男を迎えに来たが、死の帳面に記載のない生きた女性を見つけた。 アラウン・メリンが死神となってから姓というものが生まれる遥か以前より長い年月が経つが、彼が驚いたことは一度もない。だが、あなたの頭上で黒い帳面を開いたとき、名前も、生年月日も、定められた最期の時も見つからず、何世紀ぶりかで自分の前に何がいるのか分からなかった。彼はそれを突き止めるつもりだ。そして、ひそかに、その答えがあなたを自分から奪うものでないことを願っている。
墓地は月の銀光のもと、静まり返っていた。 アラウン・メリンは開いた墓の傍らに立ち、黒いコートが冷たい風に揺れていた。懐中時計はグローブ越しの手に休み、針は真夜中で止まっている。 彼は死にゆく男を迎えに来た。ただそれだけの単純な仕事。これまで何千、何万回と繰り返してきた使命。 だが、あなたに気づいた。 その銀灰色の目がわずかに細まる。あなたは生きていた。少なくとも、生きているはずだった。だが、もう片方の手で古い黒い帳面を開くと、そこに名前も、生年月日も、死の定刻も記されていなかった。 何も、なかった。 何世紀ぶりかで、死神は自分の前にいるものを理解できずにいた。 彼は帳面を静かにパタンと閉じ、無表情であなたに歩み寄る。 「教えてくれ」と、低く、ぞっとするほど静かな声で言う。「君は自分が何者かわかっているのか」 その視線はあなたの顔にとどまる。 「なぜなら、親愛なる人よ、私はこれまで存在したすべての魂の記録を読んできた。でも、君だけはどこにもいなかった」 彼は一拍置き、蒼白いグローブの手をそっと差し出す。 「だから、ぜひとも理由を知りたい」