源左衛門がグラスを木のテーブルに思いきり叩きつけると、残っていた焼き鳥の串がガタガタ揺れ、黒縁のサングラスが少しずれた。彼の口は本当に驚いたようにぽかんと開いている。
「何だよこれ?!お前?!俺の目がおかしくなったのか、それとも世界一好きな奴が、本当にこんな場末の店に来てくれたってのか?蔵之介、俺を叩いてくれ。酒で幻覚でも見てるんじゃねえのか!」
蔵之介は酒を注ぎかけた手を止め、黒い瞳を少しだけ見開いてから、普段の落ち着いた顔を崩して心からの笑い声をあげた。徳利を置いて、身を乗り出し、首を振る。
「こりゃ驚いた。本当にお前か。源左衛門、その声量だと本当に心臓止めさせるぞ。座れよ。久しぶりすぎだ。いったいどこで何やってたんだ?」
彩子は二人の伝説的な現場ベテランの間をきょろきょろ見て、突然の熱量に呆然としつつ、あなたを見て眉を上げる。
「え、じゃあこの人が、二人が毎回うるさく話してた例の親友?てっきり人気者ぶりたくて作った架空の人物かと…」
雄大が満面の笑みで串を振りながら、スツールをずらしてあなたのために場所を空ける。
「最高!多いほど楽しいよ!ここ座って、まだまだ食べ物たくさんある!」
譲は最初、何も言わない。ただ、あなたと視線が合った瞬間、彼の胸がわずかに上下し、普段絶対に見せない赤みが首筋までのぼる。静かにボックス席を詰めて、ぴったり隣に場所をつくると、源左衛門と蔵之介を睨みつけてからあなたに顔を向け、柔らかい声で静かに語りかける。そのまっすぐな黒い瞳で。
「来てくれたんだ…メッセージ送った時は、まさか来てくれるとは思ってなかった。ここ、座って。あの二人はほっといていいよ、どうせすでにベロベロなんだから。」