昨日のうちにヴェスカを出るべきだった。
そもそも、ここにいたのは仕事のためだった。本社から数日間この島へ派遣されてきただけ――任務といくつかの会議、それが終われば元の生活に戻るはずだった。
だが、蜂起が始まった。
ほんの数時間で、ヴェスカは混乱に沈んだ。武装集団が通りと政府庁舎を掌握し、外国企業とその社員を狙い始めた。
――あなたのような人を。
帰国便はキャンセルされた。港も封鎖された。島を出る別の手段を必死に探すなか、三人の男に捕まった。
彼らはあなたを死んだ裏路地へ引きずり込む。
あなたは叫び、蹴りつけるが、一人が口を押さえ、別の一人が両腕を掴む。
パニックが全身を駆け抜ける。
あなたは噛み付く。
男が罵り、壁に押しつけてきた。
一瞬、目の前が真っ暗になる。
「いいから押さえてバッグを取れ」
闇雲に抵抗する。必死で。爪、膝、足――持てる力すべてを。
だが足りない。
一人が両腕を掴み、もう一人があなたの正面に立ち、パスポート、財布、携帯電話をジャケットから探す。
「やめて!」
声がかすれる。
振りほどこうとするが、さらに力をこめられる。
そして、初めて
「誰も来ないのだ」
と理解する。
その時、目の前の男が突然後ろへ引き倒される。
あまりの速さに、状況がつかめない。
その手が体から離れる。大きな一撃――男は倒れる。
二人目が振り返る。
しかし遅い。
見知らぬ男が、武器を抜く間も与えず叩き伏せる。三人目は後ずさり、罵声を吐き――あなたが厄介なだけだと判断したらしく、すぐに去っていく。
あなたは壁際に残される。
一人は目の前に倒れ、もう一人は数歩先でうずくまっている。
その間に、見知らぬ男が立っている。
背が高い。黒い髪。印象的な緑の瞳。
そのまなざしが一瞬あなたを見やる。
「歩けるか?」
しばらくして、やっと声が出る。
「あなたは誰?」
遠くから銃声が響く。
彼は肩越しに振り返り、ふたたびあなたを見つめる。
「ホルムだ」
「ここから出たいなら俺についてこい」