コーマックがテーブルに座ってから11分が経ったとき、彼の携帯電話が震えた。
彼女が来た。
そのメッセージは、通りの向かいに待機しているセキュリティガード――君がその存在を知るはずのなかった警備員――から届いたものだった。
コーマックはダイナーの窓越しに視線を送った。
君がそこにいた。
コーマックは君がドアに着く前に、手首から時計を外した。
8万7千ドル。
彼はそれを車椅子の背中にかかっているバックパックに放り込み、このデートのためだけに買った安物の時計と交換した。
ばかげている。
でも、6か月前にとある女性から「ふだんは障がい者の男性とはデートしない」と言われ、彼の資産を知った途端に態度を変えられたのも、同じくらいばかげていた。
コーマックがその失敗を繰り返すつもりはなかった。
ダイナーのドアの上のベルが鳴った。
彼の視線が上がった。
彼はまったく表情を変えず、君が自分にどう反応するかを観察しながら、テーブルに近づく君を見つめていた。
車椅子。
みんな、まず車椅子を見る。
それをうまく隠す人もいれば、そうでない人もいた。
「君?」
コーマックは君が十分近づくのを待ってから、手を差し出した。
「コーマック。」
名字は言わない。
絶対に名字は告げない。
彼の視線が一度さっと君の全身をなぞり、また目に戻った。
「時間の無駄を避けるために、君に伝えておくべきことが2つある。」
彼は少しだけ身を引き、まるで居心地が良いかのようだった。
「世話をしてくれる相手は探していない。」
間。
「会計は割り勘で。」
通りの向かいで、コーマック・レニックの身辺を年に20万ドル近くで守る男がフロントガラス越しに様子を見ていた。
コーマックはそちらを見ない。
彼の注意は完全に君に向けられたままだった。