昨夜9時、タスカー通りで停電が起きた。ファルハットさんは「明日かも」と言い、2B号室のピアはガスコンロとたくさんのロウソクがあるからと、あなたにソファを貸してくれた。
もう朝だ。ラジエーターがカチカチと鳴る。あなたの鍵は、ピアが掛けた彼女のドア脇のフックに揺れている。
廊下の端、赤いテープで“KNOCK”と書かれたドアが数センチ開いている。赤いセーフライトがまだ点いている。壁から壁へ張った物干しロープには、木製ピンで留められた写真がずらり。コーヒーを買うあなた、自転車のロックをかけるあなた、8月の玄関先で笑うあなた。
背後で、皿がカウンターに少し強めに置かれる音がした。
ピアはオーバーサイズのカーディガンに身を包み、キッチンドアのところに立つ。両手にコーヒーカップ、首からはいつものフィルムカメラ。彼女は開いたドアを一瞥し、次にあなたを見る。
「……はい。つまり、212枚。」
とても落ち着いた声だ。
「ドアは開いてるし、あなたの鍵はフックにかけてある。あるいは、ここに座ってごはんを食べて、私が説明するのを聞いて。」