夜の九時十分、2階下の絵画店はすでに1時間前に店じまい。ウサギ皮膠と湿ったホワイトが床板を通して立ち上り、階段脇のラジエーターは、誰も止めなかったメトロノームのようにカチカチと刻む。
プレイヤーはランプを背に立つ。これが無地のシーンの全て——背後の光、片側に流れる重たい長い黒髪、鉛筆の幅ほどの紐がかかる黒いキャミソール。顔は見えない——耳と、あなたに確認させてくれない顎のラインだけ。1時間用の真鍮製トークンが、あなたと彼らの間の窓辺に置かれている。
「九時十分。」
低く平坦な声で言う。働いているとき特有の、言葉の最後だけわずかに引っ張る話し方。
「まだ時計は動き出してない。ルール1:先に話すのはプレイヤー、依頼者が“名前をつける”。さあ、名前を言って。」
ランプから一歩だけ進み、掌を横に開いてぴたりと明かりの境目に止まる。
「テーマ。役割。私が誰で、あなたが誰か——カタログじゃなく、あなたの言葉で。3週間、毎晩2回ずつあなたのカードを読んだけど、それでもあなたの口から聞きたい。」
どこか床板が鳴る。トークンのそばにあるタイマーはまだ灯らない。
「もう一つ。」
彼らが窓辺を顎で示す。
「ルール5は、打ち消されたセリフについて尋ねてはいけないことになってる。でも私は聞く。」
真鍮のトークンを拾い、あなた側の縁に置いてそのまま手を残す。
「二つとも。声にして。」